安定した風が吹くため、風力発電の投資資金は6〜8年で回収できるという(甘粛省酒泉市瓜州県)
【上海=土居倫之】甘粛省や内モンゴル自治区など中国内陸部が「新エネルギー・ブーム」に沸いている。中国政府は2020年に太陽光発電の設備容量を11年比約23倍、風力を同4.3倍に引き上げ、環境負荷の大きい火力発電への依存度を引き下げる方針。日照や風に恵まれた内陸部の立地を利用し、大規模な発電所を建設、沿海部と比べて発展の遅れる内陸部の経済成長につなげる狙いだ。
中国西部の甘粛省酒泉市。人口約100万人の中規模都市だが、12年1〜6月期の域内総生産(GDP)実質成長率は16.5%と全国(7.8%)の倍以上を記録した。けん引役となったのは、「太陽光や風力など新エネルギー投資」(市政府関係者)だ。市中心部には屋上に太陽光発電を備えた新しいマンションの開発が急ピッチで進む。
中国は太陽光や風力発電など自然エネルギーの開発を加速する。国務院がこのほど発表した新興産業発展計画によると、太陽光の設備容量は11年実績(214万キロワット)を20年に5000万キロワットに、風力は同(4700万キロワット)を2億キロワットにそれぞれ引き上げる。
中国は同年に原子力発電の設備容量を6000万〜7000万キロワットに引き上げる見通し。政府は太陽光や風力を原発に匹敵する重要な電力と位置づける。11年時点で中国は石炭を中心とする火力発電が7億6000万キロワットと全発電の72%を占めており、環境負荷が大きい石炭発電の割合を低下させるのが狙いだ。
中国は自然エネルギーを普及させるため、太陽光発電によってつくられた電力については昨年固定価格買い取り制度を導入した。風力発電も一部で固定価格買い取りを認めている。
内モンゴル自治区や甘粛省など地価が安く自然環境が発電に適する西部地域では出力が大きいメガソーラーや風力発電基地の建設が続く。
風力発電大手の中国風電集団は甘粛省に100万キロワットの太陽光発電基地を建設することで地元政府と合意した。太陽光発電などを手掛ける新天緑色能源は内モンゴル自治区西北部に5万キロワットの太陽光発電基地の建設を計画。「年間平均日照時間が3110〜3400時間に達し、太陽光発電に適している」(同社)という。
大手電力の中国電力国際発展などが数千基単位の風力発電基地を建設した甘粛省瓜州県では、「15年までに風力だけで800億元(9900億円)の追加投資が予定されており、地域経済に与える影響は大きい」(袁世禄能源局副局長)。
内陸部の開発により、過当競争で苦境に陥っている関連業界を支援する狙いもある。太陽光発電最大手のサンテックパワーの2012年1〜3月期が1億3300万ドルの最終赤字に陥るなど関連企業は軒並み赤字の状況で、一部企業は経営破綻の可能性も指摘されている。