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メモ「新しい時代の文楽/三谷文楽 & 古典文楽」

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 橋下市長の政策提案が「新しい時代を生き延びる文楽」つくりのきっかけとなりそうですね、能と狂言の関係の様に発達するといいですね、観に行きたくなるのは、私だけでしょうか!

 (文楽)パルコ劇場「三谷文楽 其礼成(それなり)心中」 :日本経済新聞

 三谷幸喜がなんと文楽に挑んだ。作・演出ともに手がけた新作文楽の結果は上々。シチュエーション・コメディーの名手らしく、冒頭から意表をつく。「曽根崎心中」の名場面で「ちょい待ち!」と止めに入る男がもうおかしい。

近松門左衛門(上)まで登場。下は半兵衛  =写真 尾嶝 太  

近松門左衛門(上)まで登場。下は半兵衛
=写真 尾嶝 太

 その男、主人公の半兵衛は天神の森のはずれの饅頭(まんじゅう)屋。近松門左衛門が「曽根崎心中」で大ヒットを飛ばしたおかげで心中の名所となり、縁起が悪いと売れ行きがさっぱり。夜のパトロールで心中を警戒していたのだ。2時間のコメディーは心中ブームに振り回される庶民の喜劇である。

 太夫と三味線が背景の中ほど、つまり舞台の中心に。主役はこの人たちという意味合いか。堀尾幸男の白と黒を基調にした装置、服部基のスポットライトの照明など、簡素で現代的なセンスが人形の表情に新しい魅力を加える。

 注目の床本は「逆ギレか」といった現代語やカタカナ言葉をアクセントにし、笑いをとる間合いが巧みだ。近松ゆずりの詞章を引用しつつ、徹底してわかりやすい言葉を選ぶ。それでいて浄瑠璃らしく聞こえるのは、太夫の語る力のたまもの。呂勢大夫の人間描写がめざましく千歳大夫もがんばり、清介らの三味線、若手人形遣いも近松のパロディーを面白くこなしている。水泳シーンには、びっくり。

 半兵衛、おかつ夫婦は心中未遂の男女を説諭するうち、身の上相談を商売にする妙手を思いつく。が、次作によって網島の天ぷら屋に客を奪われ、ついには生活を脅かす近松その人への直訴へ。

 世の一隅に咲く名もなき民の心の花。命の大切さ、反心中の思いを乗せる人情話は、大近松の気迫と拮抗する庶民の心のかさを形づくる。作者のナイーブな感性は生身の俳優より、人形に似合う面があるだろう。三谷文楽の次作を待ちたい。22日まで、パルコ劇場。

(編集委員 内田洋一)

 

文楽 夏休み特別公演 :日本経済新聞

 人形浄瑠璃文楽の意地をかけた夏休み特別公演が、国立文楽劇場(大阪市)で行われている。橋下徹・大阪市長から文楽協会への補助金交付で“改革”を求められている中、今公演は「(補助金問題が心配で)夜中に目が覚めることがある」と話していた太夫の筆頭・竹本住大夫(人間国宝)が体調を崩して休演する事態で迎えた。加えて、上演場所の大阪は文楽の本拠地でありながら「東京に比べて客の入りが悪い」とされるだけに、出演者・裏方一同は芸の力で盛り上げずにはいかない舞台だ。

「曽根崎心中」の「天満屋の段」。縁の下に徳兵衛を忍ばせたお初は九平次の悪口に切り返す=国立文楽劇場提供

「曽根崎心中」の「天満屋の段」。縁の下に徳兵衛を忍ばせたお初は九平次の悪口に切り返す=国立文楽劇場提供

 夏休み特別公演は朝・昼・夜の3部制で、夜の部は近松門左衛門の名作「曽根崎心中」がかかっている。この作品は元禄時代に大坂・天神森で起きた醤油(しょうゆ)屋の手代・平野屋徳兵衛と遊女・天満屋お初の心中事件を題材にした物語。「生玉社前の段」「天満屋の段」「天神森の段」でなり、眼目は「天満屋の段」。友人の九平次に金をだまし取られて進退窮まった徳兵衛はお初のいる天満屋に忍び入り、お初は天満屋の縁先に腰掛けて縁の下に忍ばせた徳兵衛に足で心中の覚悟を問う。この段を語るのは竹本源大夫(人間国宝)、三味線は鶴澤藤蔵だ。

 まず重要な「天満屋の段」の語り出し。源大夫は「恋風の身に蜆(しじみ)川流れては……」の語りで北の新地の夕暮れの雰囲気を醸しだしておいて、「夜毎に灯す燈火(ともしび)は……」で色里のにぎわいを示し、続く「無残やな天満屋のお初は内へ帰りても……」で劇場内を暗鬱とした空気で満たした。と書くと、源大夫は何やら語りこんでいるようだがむしろ逆。サラサラとした語りで場面の情景や人物の心の動きを映し出した。「天満屋の段」は感情を爆発させる愁嘆場がないために「難しい」とされるが、その難しさを感じさせずに何でもないように語って見せるのが芸というものだろう。三味線を勤める藤蔵も太夫の語りとつかず離れずでサラサラと弾いて語りと合っていた。

 源大夫は1年ちょっと前に心臓の手術をしたが、体調は良さそうだ。また、近松物は師匠の八代竹本綱大夫譲りで、源大夫の人に合っていることもあろう。さらに、今公演を住大夫は休演している。こうしたもろもろのことを芸の一事に集中して勤めている舞台なのだろう。

「曽根崎心中」の「天神森の段」。お初を遣う吉田簑助と徳兵衛の桐竹勘十郎=国立文楽劇場提供  

「曽根崎心中」の「天神森の段」。お初を遣う吉田簑助と徳兵衛の桐竹勘十郎=国立文楽劇場提供

 一方、人形はお初が吉田簑助(人間国宝)、徳兵衛は桐竹勘十郎という師弟コンビで勤める。簑助の遣うお初はどこまでも柔らかい。天満屋の縁先にお初の人形を腰掛けさせた構えを保つのに人形遣いは非常につらい姿勢を強いられると聞くが、簑助は無論、そんなことをみじんも感じさせない。店にやってきた九平次の悪口にお初が切り返すくだりも、力を入れて遣うのではなくサラッとやった。そうでないと、「天満屋の段」の雰囲気が壊れてしまう。かたや勘十郎。徳兵衛は吉田玉男が千百回以上も勤めた当たり役で、勘十郎は簑助の遣うお初の左遣い(人形の左手を担当)をしながら玉男の徳兵衛を身近に見ており、玉男を手本にした徳兵衛だろう。

「曽根崎心中」の「天神森の段」。徳兵衛とお初はかかえ帯で互いの体を結び合う=国立文楽劇場提供 「曽根崎心中」の「天神森の段」。徳兵衛とお初はかかえ帯で互いの体を結び合う=国立文楽劇場提供

 さて、この段の山場、縁先でお初が降ろした足で徳兵衛と互いの意志を確認する場面。お初の足は足遣いが遣うので、お初の首を遣う簑助にお初の足が徳兵衛の遣い手に触られているかどうかなど分かろうはずがないのに、太夫の語りの文句と徳兵衛とお初の足のやり取り、お初の上半身のしぐさが合うのは不思議だ。また、徳兵衛と天満屋を抜け出すために、お初が箒(ほうき)にくくりつけた扇子でつり行灯(あんどん)をあおぎ消そうとして階段から落ちる場面。気持ちだけで演じるこの場面にいつ落ちるかの合図は人形遣いの間でかわされないそうだから、左手を遣う左遣いや足を遣う足遣いは簑助と気持ちを一にしていればこそ見事に一緒に落ちられる。

 そして死への道行き「天神森の段」では、死を決意した徳兵衛がお初をリードする一方、それまで徳兵衛に覚悟をうながしていたお初はなよなよとしてくる。ここを語る太夫はお初が豊竹呂勢大夫、徳兵衛は豊竹咲甫大夫。お初は美しくうたい、徳兵衛は突っ込んで語りと役の対照の妙が出ていた。最後の心中場面は徳兵衛がお初を脇差しで突いて終わるか、突く前で終わるかなどやり方はいくつかあるが、今舞台の終わり方は見てのお楽しみだ。

 昼の部では名作の「摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)」の「合邦庵室」と「伊勢音頭恋寝刃(こいのねたば)」の「古市油屋」と「奥庭十人斬り」などが上演されている。「合邦」は親子の情愛をテーマに、玉手御前の俊徳丸に対する恋の激しさや嫉妬による狂乱ぶりなどの聴きどころ・見どころが随所にあり、豊竹嶋大夫、豊竹咲大夫らが持ち味を出して客席を納得させた。「古市油屋」は休演した住大夫に代わって弟子の竹本文字久大夫が語る。文字久大夫は「曽根崎心中」の「生玉社前の段」に加えての出演で、その緊張感が舞台によい方向に作用しているように感じられた。

(編集委員 小橋弘之)

 8月7日まで、大阪市の国立文楽劇場。

  「伊勢音頭恋寝刃」の「奥庭十人斬りの段」。お紺を遣う吉田文雀と福岡貢を遣う吉田玉女=国立文楽劇場提供

「伊勢音頭恋寝刃」の「奥庭十人斬りの段」。お紺を遣う吉田文雀と福岡貢を遣う吉田玉女=国立文楽劇場提供

  「摂州合邦辻」の「合邦庵室の段」。玉手御前を遣う吉田和生と合邦道心を遣う吉田玉也=国立文楽劇場提供  

「摂州合邦辻」の「合邦庵室の段」。玉手御前を遣う吉田和生と合邦道心を遣う吉田玉也=国立文楽劇場提供

 

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