バイオマス 利用拡大 政府、消費電力の5%目標 アジアに技術、燃料調達 :日本経済新聞
政府が月内にまとめるバイオマス(生物資源)事業化戦略の原案が16日、明らかになった。現時点で0.3%程度にすぎない日本の全世帯の消費電力量に占めるバイオマス発電の割合を、2020年までに約5%に高める目標を掲げる。東京電力福島第1原発の事故を受け原発への依存度を引き下げる議論が勢いづくなか、風力や太陽光とともにバイオマスを再生可能エネルギーの柱に育てる。
バイオマス事業化戦略は月内にも開く内閣府、農林水産省、経済産業省関係府省の政務官からなるバイオマス活用推進会議で正式に決める。7月に閣議決定した「日本再生戦略」では環境や再生エネルギー分野などを柱に据えており、8月末に各府省が財務省に示す13年度予算案の概算要求に反映させる。
事業化戦略の原案は、火力発電所で石炭に混ぜて燃料などに使う木質チップ、メタン発酵させて発電に必要な熱をつくる食品廃棄物や家畜排せつ物などの重点的な活用を提示する。中でも、森林で伐採した木の残りかすは利用がほとんど進んでいない。政府はこうした伐採地の残りかすを回収するための施設などインフラ整備を急ぐ方針だ。
工場で木材を加工する際に出る木くずや、家畜排せつ物の利用は国内で9割以上に達している。このため原案は、政府開発援助(ODA)を使い、木くずや家畜の排せつ物が豊富にあるタイやベトナムなどアジア諸国で日本が持つバイオマス技術の普及を支援する方針も明記する。
企業や大学とも連携し、木くずや家畜排せつ物などを固体燃料に変える技術を移転、バイオマスの生産拡大を促す。課題とされる採算性や、安定的な調達先を確保するのが狙いだ。海外への技術移転を通じて輸入を増やし、発電でバイオマスを利用する割合のさらなる引き上げをめざす。
政府のエネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略担当相)は6月末、30年時点の電源構成での原子力依存度を0%、15%、20〜25%にする3つの選択肢を提示した。今夏にも決定する原子力依存度の数値目標が0%なら、バイオマスや太陽光発電などの再生エネルギー(水力も含む)は10年の約10%から35%に、15%なら30%に、20〜25%なら25〜30%に目標が高まる。
バイオマス事業化戦略の原案に盛り込んだ消費電力量の約5%を賄う目標値は「原子力依存度が0%になれば、さらに高めざるを得ない」(農林水産省)という。技術開発の進展状況などを検証するため、専門家による会合を開いて2年ごとに数値目標を見直す。