トヨタのハイブリッド技術の中国への開放は今春報道されていた通りです。先日のヨーロッパでの「自動ブレーキ義務化」の動き、電池関連の技術革新スピードアップ(トヨタでもリチウムイオン電池化は極最近)等考えると、自動車でも大きな改革が進行中です。エンジンルームを見ても、もはや全く分かりません。これが更にIT化していきます。車とタブレットと区別がつかない世界です!ガラパゴスで最先端だのに遅れる現象が一番もったいないのです。なんとかせかいをりーどするいちづけにもっていくことをのぞみま
トヨタ、2013年問題は好機? ハイブリッド車技術特許切れ 中国勢量産なら市場拡大も :日本経済新聞
中国にハイブリッド車市場ができあがれば、米欧勢を追い上げる好機に(愛知県豊田市の堤工場)
米国ではシェールガス革命が進行しているが、中東へのエネルギー依存状態を変えてしまうかもしれない動きがもう1つ起きつつあるのをご存じだろうか。
それは、トヨタ自動車のハイブリッド車技術の特許切れだ。実は、節目は来年やってくる。ハイブリッド技術といっても、何十種類と特許は存在するようだが、トヨタ幹部によれば、「最も大きい部分(技術)の特許が2013年中に切れる」という。
リチウム争奪戦が激化
シェールガス革命とハイブリッド車。一見、無関係な2つだが、中長期的には世界各国のエネルギー政策や戦略にどちらも大きな影響を与えうる存在だ。例えば、シェールガス革命は天然ガス生産国としての米国やカナダの地位を一気に高めるきっかけをつくったが、ハイブリッド車も、みんなが買えるような状況になれば「リチウム」がとれる国や地域の位置づけを大きく変える可能性がある。
リチウムはハイブリッド車のモーター部分を動かすエネルギー源、すなわちリチウムイオン電池の原料となる資源である。まずはパソコン用の電池として普及が始まり、レアアースと同様、中国産などが使われるケースが多かったようだが、埋蔵量が最も多いと言われているのは実は、南米のアンデス山脈。とりわけアルゼンチンやチリに近いボリビアのウユニ塩湖だ。
ウユニ塩湖は3年ほど前から注目を集め、日本の総合商社ほか、中国、韓国政府がボリビア政府に対し、共同開発を申し入れている。
最近は動きが鈍っていたが、トヨタのハイブリッド特許が切れた後はどうなるだろう。米国や欧州、あるいは韓国の自動車メーカーがこぞってハイブリッド車に参入。市場がにぎわえば、リチウムの権益を目指して各国の政府・企業が再び動き出す可能性がある。
ハイブリッド車は車の燃費効率を高めるのに有効な技術だ。だが、世界で見ると、日本と米国以外で普及している国はあまりない。1つは、ガソリンエンジンにモーターを組み合わせる技術が難しく、トヨタの特許も複雑に入り組んでいるため。このため、「トヨタにライセンス料を支払ってまで」とあえて参入を避けてきたメーカーは、少なくなかった。
今後注目されるのは中国だろう。中国は世界最大のエネルギー消費国となり、ガソリン車からエコカーへの転換を経済政策の根幹に位置づけている。ハイブリッド車技術にはかねて関心を持っており、トヨタにも技術移転を何度か求めてきていた。
一時は自前で電気自動車を普及させ、世界に輸出していこうとした時期もあった。ハイブリッド車はトヨタの技術供与がなければ、中国メーカーには量産ができなかったからだ。
巨大市場で巻き返せるか
だが、電気自動車も結局はうまく行かず、最近になって再びハイブリッド車、とりわけ家庭の電源で充電できるプラグインハイブリッド車の技術導入に方針転換をしつつあるといわれている。
中国でハイブリッド車に力を入れたいトヨタの働き掛けもあっただろう。だが、中国側にとっては主要な技術でトヨタの特許が切れるとわかったことも大きかったはずだ。米欧メーカーが特許切れの技術で量産を始めれば、従来の提携関係を生かして、中国のメーカーもハイブリッド車の生産をスムーズに始められる可能性が高まる。
もっとも、トヨタの利益も大きい。中国は2030年にかけて世界の3割を占めようかという自動車市場だ。そこにハイブリッド車の市場ができあがれば、米欧勢に出遅れた同国で一気に巻き返せるチャンスが巡ってくる。ハイブリッド車革命は中国以外にももちろん、広がっていく。
米国では最近、シェールガスの大量採取を可能にした掘削技術が「21世紀最大のイノベーション(技術革新)」と言われ始めているという。単に天然ガスの価格が下がったというだけではない。革命を機に、石油メジャーが基礎素材のエチレン工場を建設するなど、製造業の米国回帰を促す効果が大きかったからだ。
日本もうまくすればハイブリッド車革命の恩恵に浴せる可能性がある。ボリビアがリチウムで注目されるなら、日本は一日の長があるハイブリッド車向けの制御技術や材料、ビジネスモデルで新たな成長産業の柱を打ち立てたいものだ。電機業界の再生にもきっとつながるはずである。
(産業部次長 中山淳史)