朝日新聞デジタル:日本製紙、エネルギー事業に本格参入 事業構造転換図る
今年から売電を始めた日本製紙の富士工場=静岡県、日本製紙グループ本社提供
文書の電子化などで国内の紙市場が縮小傾向にあるなか、業界2位の日本製紙グループ本社は、売電などのエネルギー事業に本格参入する。製紙業で培った木材利用や発電の技術を生かして、事業の構造転換を図る。
エネルギー事業への参入は資産を最大限に活用する発想から生まれた。中期計画(2012〜14年)でも、力を入れる新規事業として位置づけた。5月に電力の小売りができる特定規模電気事業者(PPS)の認可を受け、7月にはエネルギー事業部を新設した。
日本製紙は、民間で全国2位の広さがある社有林、約9万ヘクタールをもつ。政府が示した再生可能エネルギー買い取り制度を追い風に、木材を紙の材料としてだけでなく、発電のエネルギー源として利用する。
また、紙の製造過程で木材チップから出る排液「黒液」を燃料とするバイオマス・ボイラー設備が12工場にあり、石炭などを使うボイラーと合わせて、約170万キロワットの発電能力をもつ。
電力会社以外では国内最大級の発電能力だが、事業として本格的に売電しているのは北海道の釧路工場だけで、11年度の売上高は180億円。今後は他の工場でも売電を拡大させる。
海外のグループ会社でも発電に力を入れる。カナダの大昭和・丸紅インターナショナルは2月からバイオマス発電を開始。米国の日本製紙USAも来年4月から始める予定だ。国内を含め、グループ全体で年50万メガワット時程度を新たに供給する計画だ。さらに東北地方の工場にバイオマス発電設備の新設も検討する。
本業で苦戦が続く製紙業では、発電事業を強化する動きが加速している。王子製紙は、北海道の工場で使う電力を作っている水力発電6カ所を4年かけて改修するほか、釧路工場でも9月から余剰電力の売電事業を始める。大王製紙は主力の三島工場(愛媛県四国中央市)から四国電力への売電を昨年の2倍に増やしている。(大和田武士)