東洋紡は6日、断裂した神経の再生を促すチューブを開発したと発表した。病気や事故で断裂した神経の欠損部分にはめ込んで使う。施術が簡単で患者の負担が小さく、知覚が回復する確率も高まるとしている。来春にも厚生労働省の承認を得て医療機関に販売する。2015年度に年間50億円の売り上げを目指す。
特殊な医療用コラーゲンをチューブの中や外側に塗り、神経が正しい方向に伸長するのを促す。神経が1日に約1ミリメートル伸び、6カ月後には知覚が回復するという。直径0.5〜4ミリメートルのチューブ自体は体に吸収される材料でできており、3カ月で分解されて消失する。コラーゲンは日本ハムが開発した。
損傷した神経を再生する新しい治療用医療機器「神経再生誘導チューブ」を開発、製品化へ2012年9月6日
従来よりヘパリンコーティングをはじめ生体適合化技術を開発研究してきた当社は、このたび病気や事故などで損傷した神経の再生を促進させる、新しい治療用医療機器「神経再生誘導チューブ」を開発しました。薬事法に基づく臨床試験(治験)を行った結果、有効性が確認されたため、本年2月に厚生労働省へ製造販売承認申請を行い、現在審査中です。
1.開発の経緯 一般に、病気や事故などで神経が損傷した場合、患者は「自家神経移植」や「神経縫合」などの外科治療(手術)を受けます。
「自家神経移植」は、患者自身の健常な神経(例えば足の神経)を採取し、受傷部に移植する治療法ですが、健常な採取部に傷が残ったり採取部に痛みやしびれが現れるなど、患者に大きな負担がかかります。一方「神経縫合」は、切れた神経同士を直接縫合する治療法ですが、その際、張力がかかると治癒せず知覚異常や痛みが残ることがあります。その他、挫創などへの治療法としても適していません。
また、受傷して救急病院へ運び込まれた患者の場合、切れた血管や骨をつなぐことが優先されるため、やむを得ず神経をつながないこともあります。
これらの問題を解決するため、当社は、「神経再生誘導チューブ」を開発しました。
外観写真
断面写真(拡大写真)
(1)「神経再生誘導チューブ」を断裂した神経の欠損部分(ギャップ)にはめ込み、固定することで中枢側より神経が「神経再生誘導チューブ」の内腔を伸長し、末梢側の神経とつながって機能が回復します。また「神経再生誘導チューブ」自体も、ポリグリコール酸(PGA)などの生体内吸収性材料で構成されていますので、約3カ月で分解して吸収され消失します。
(2)「神経再生誘導チューブ」は、新たに開発された医療用コラーゲン(「NMPコラーゲンPS」日本ハム?社製)を使用しています。このコラーゲンを、チューブ外面に塗布するとともに、チューブ内腔にも充填しているため、これを足場として、チューブ外側からも栄養血管を誘導するなど、神経が伸長、再生しやすい構造になっています。
「神経再生誘導チューブ」による治療過程(模式図)
(1)現行の治療法である「自家神経移植」や「神経縫合」と同等かそれ以上の治療効果(知覚の回復など)が期待されます。
(2)自家神経移植のように、患者の健常な部位の神経を採取する必要がないため、新たに傷つけることがなく、その分、施術時間も短縮されるため患者の負担は大幅に軽減します。
(3)特別な手術設備(たとえば顕微鏡手術の設備など)が必要ないので、いわゆる一次救急病院でも使用することが可能となり、患者の術後早期のQOL(Quality of Life)回復、社会復帰に貢献します。
4.臨床試験(治験)結果 手、指の神経損傷に対して、薬事法に基づく臨床試験(治験)を行った結果、84.2%の有効性(知覚回復効果)が認められました。また、神経欠損部の長さ(欠損長;ギャップ)が20mmを超える症例でも、有効性が確認されました。
本年2月に、厚生労働省へ新しい医療機器として製造販売承認申請を行い、現在審査中です。
2013年春に製造販売承認を取得するとともに販売を開始する予定です。
また、2015年には売上高50億円を目指します。
以上