東レは6日、アラブ首長国連邦(UAE)の2首長国で相次いで水処理膜を受注したと発表した。海水を飲み水に変えるプラントに使われ、いずれも2013年に稼働する。造水量は合計で1日あたり11万3000立方メートルとなり、1日に45万人が使う量に相当する規模となる。東レは水処理膜の世界大手で、今回の受注をきっかけに中東地域での受注拡大を狙う。
受注したのはアジュマーン首長国とラス・アル・ハイマ首長国からで、東レはスペイン企業などが建設するプラントに膜を納める。水処理膜にはいくつか種類があり、今回は不純物を最も通しにくい「逆浸透膜」と呼ぶ膜を納入する。
東レの逆浸透膜、アラブ首長国連邦の海水淡水化プラントで連続受注 | TORAY
東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:、以下「東レ」)は、このたび、アラブ首長国連邦(以下「UAE」)のアル・ザウラ(アジュマーン首長国)ならびにガリラ(ラス・アル・ハイマ首長国)の海水淡水化プラント向けに、相次いで逆浸透(RO)膜納入の受注をしました。2つのプラントの合計造水量は11.3万m³/日で、いずれも来年度の稼働開始予定です。
今回、RO膜納入を受注した2つの海水淡水化プラントの概要は、下記の通りです。
①アル・ザウラ海水淡水化プラント(アジュマーン首長国)
(造水量:4.5万m3/日、稼働予定:2013年)
アル・ザウラはUAEアジュマーン首長国のRO法海水淡水化プラントで、スペインのカダグア(Cadagua)社がプラント建設を受注しました。FEWA([アラブ首長国]連邦電力・水庁)の管轄です。
②ガリラ海水淡水化プラント(ラス・アル・ハイマ首長国)
(造水量:6.8万m3/日、稼働予定:2013年)
ガリラはUAE ラス・アル・ハイマ首長国のRO法海水淡水化プラントで、UAEのアクアテック・イースタン(Aquatech Eastern)社がプラント建設を受注しました。こちらもFEWAの管轄です。
近年アラビア湾岸諸国では原油価格高を背景に、旺盛なインフラ投資が行われ、特に飲料水確保のための海水淡水化プラントの建設計画が多くあります。アラビア湾では温度が35度以上の高温で、かつ塩分濃度も日本近海の1.5倍に当たる5%近い高濃度の海水であることから、海水淡水化技術ではエネルギー多消費型の蒸発法が主流で、RO法は運転が困難とされ採用は限定的でした。
東レは既にこのアラビア湾で、バーレーン、クウェート、サウジアラビアなどの海水淡水化プラントへもRO膜を納入しており、業界でトップの納入実績を有しています。UAEのアラビア湾内では今まで大規模ROプラントは建設されてきませんでしたが、新たなプラント建設に当たって東レが納入した苛酷な海水域での実績を買われて、今回の連続受注となりました。
東レはUAE国内でこの2案件を含め48万m3/日、FEWAの管内(北部4首長国)では24.5万m3/日のプラントに納入することとなりました。今回のプラント建設により、アラビア湾ではRO法の採用に弾みがつくと思われますが、東レは最先端の膜技術でこの地域におけるRO法の普及にこれからも貢献していく所存です。
なお、東レの現在のRO膜の累積出荷は生産水量に換算しますと25.7百万m3/日を超え、生活用水換算では1億人分を超える水量(世界人口の約1.5%)に相当します。また、東レの海水淡水化分野におけるRO膜の累積出荷実績も6百万m3/日を超え、この分野でトップシェアとなります。
世界のRO膜市場は、世界的な水不足の深刻化や環境に配慮した水資源確保の要請等から、成長を続けています。用途では従来の海水、かん水淡水化による飲料用途や工業用純水用途に加えて、都市下水・産業廃水再利用、農業用水などの用途が育ちつつあるとともに、地域的には従来の欧米、中東・北アフリカ、中国を中心に着実な成長が予想される一方で、インドや南米といった新興国における需要拡大も期待されています。
東レは、1968年にRO膜の研究を開始し、現在、逆浸透(RO)膜、ナノろ過(NF)膜、限外ろ過(UF)膜、精密ろ過(MF)膜の4種類すべての膜を自社開発でラインナップして事業展開する世界唯一のメーカーです。引き続き、コア技術である有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーをベースとした世界トップレベルの水処理膜技術を柱に、成長を続ける世界市場での積極的な受注拡大を図ります。
東レは、2011年4月からスタートした中期経営課題“プロジェクト AP-G 2013”において、地球環境問題や資源・エネルギー問題といった地球規模の課題解決に貢献する「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」を推進しており、水処理事業をその重点領域の1つに位置付けています。今後も、グローバルな営業体制の拡充・強化とともに、生産体制整備と能力増強、新技術・新製品の創出によって、水処理膜のリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものとしてまいります。
以上
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