レアアース、脱中国進む トヨタや三菱電機、使用ゼロの磁石開発 レアメタル、官民で採掘 :日本経済新聞
トヨタ自動車や三菱電機は、ハイブリッド車や省エネ家電のモーター用にレアアース(希土類)を使わない新磁石の開発に乗り出す。鉄の磁石にレアアースを混ぜなくても、強い磁力を保てる技術を生み出す。月内に技術研究組合を発足し、2021年度の実用化を目指す。レアアースなど希少金属を中国などからの輸入に依存する体質を抜本的に見直し、次世代製品に不可欠な強力磁石の安定生産につなげる。
ハイブリッド車やエアコン用の高性能モーターに使う磁石は主原料の鉄に、磁力を高める「ネオジム」と耐熱性を高める「ジスプロシウム」を混ぜる。レアアース全体の中国依存度は5割程度まで低下してきたが、ジスプロシウムはなお9割超とずばぬけて高い。
これまで各社は中国依存を脱却するため、レアアースの使用量の削減や調達先の多様化、さらには他のレアアースへの切り替えなどの対策に取り組んできたが、今回の取り組みは全くレアアースを使わない強力磁石の開発という新段階に入る。
新たな磁石の開発にはダイキン工業やデンソー、愛知製鋼、NECトーキンなど11社・団体が加わり、10月中に「高効率モーター用磁性材料技術研究組合」を立ち上げる。経済産業省は開発費の補助や税優遇などでこの組合を支援する。レアアースに代わる別の金属を鉄に混ぜて新磁石をつくる。すでに学術研究で理論上はネオジム磁石を上回る磁力を生み出せることを確認済みという。
10年9月に中国漁船が沖縄県・尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に衝突した事件後には、中国がレアアースなどの供給を絞り、国内生産が混乱した。今夏の尖閣諸島の国有化を巡る対立では「今のところ調達に大きな支障はない」(経産省)。
しかし政府はレアアースを含むレアメタルの安定調達に向け、日本企業が持つ海外の鉱山権益と国内でのリサイクル分を合わせた「自給率」を30年時点で5割に高める計画。レアアースのうちネオジムやセリウムといった軽希土類は数年後に5割に達する見通しだが、ジスプロシウムなど重希土類は1割に満たず、脱中国依存が大きな課題となっている。
一方、レアメタルなど国内資源の採掘に向けたプロジェクトも動き出す。鉱山機械製造の三井三池製作所(東京・中央)や石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は日本近海に多い海底鉱物の掘削に世界で初めて成功。18年度にも官民共同の採掘会社をつくる。
三井三池などが試掘したのは、海底から噴出する熱水に溶けた金属成分が沈殿した海底熱水鉱床。沖縄近海や小笠原海域で約15カ所見つかっている。銅、鉛、亜鉛、金、銀、ゲルマニウムなどのレアメタルを含む。経産省によると、推定埋蔵量は5000万トン。単純計算だが銅や亜鉛など国内需要の十数年分に及ぶ可能性がある。
経産省は海底鉱物の採掘計画の見通しを18年度までに立てる。民間企業による商業化を想定しており、商社や鉱山会社が採掘に参画しやすいよう、資源機構も出資して官民で共同事業体を設けることを検討する。