グーグルのネットテレビ、好みの番組先読み配信 スマートTVにらむ :日本経済新聞
米グーグルが利用者一人ひとりの好みに合わせて番組や広告を流す「究極のネットテレビ」の実現を加速している。スマホなどから消費者の利用履歴を収集、分析する。同社が運営する動画配信サイト「ユーチューブ」を核に、対象者を絞り込んだ広告を強化するなど、着々と布石を打つ。
動画は「チャンネル」と呼ぶ単位で分類されている
Aさんは、帰宅するとテレビのスイッチを入れた。画面に映ったのはユーチューブの動画。帰宅途上の電車の中で、スマートフォン(スマホ)を使って見ていた。続きを見終えると今度は画面に、ネット配信映画や放送中のテレビ番組などの中から「お薦めコンテンツ」が表示された。Aさんはリモコンで購入手続きした映画を楽しんでから就寝した。
これは米グーグルが実現を目指す、いわゆる「スマートテレビ」の視聴スタイルだ。同社はスマートテレビ用の基本ソフト「グーグルTV」の開発を進める。昨年11月には最新版を発表した。
個人が利用するスマホやパソコンなどから、グーグル製サービスの利用履歴情報を収集。情報を分析して、利用者の好みに合うようにテレビ番組表を自動的に編集したり、興味があるとみられる動画コンテンツを動画サイトから選んで表示したりできるようになる。
既に、ユーチューブにはその先駆けともいえるサービスを導入し始めている。
昨年夏、ユーチューブの動画の分類方法を世界規模で刷新。ニュースやスポーツ、動物といった大きな分類で分けられていたコンテンツを「チャンネル」と呼ぶより細かな分類に変更した。
「AKB48」など特定の音楽アーティストや「トヨタ自動車」など企業ごとの動画をまとめたチャンネルを設けて、気に入ったチャンネルを利用者が登録して動画を素早く検索・視聴できるようにした。12月にはスマホ版サイトについてもチャンネル単位へ刷新している。
ユーチューブ内での広告配信の強化も将来のグーグルTV普及をにらんだものだ。
同社はスマホなどと連携して、利用者の好みや関心に応じて広告対象を絞り込む仕組みを導入。その上で昨年、配信を受けた利用者が広告を視聴した場合だけ広告主に料金を請求する「成果報酬型」商品の販売を強化した。これが奏功し、1年間で成果報酬型の利用企業を2倍に増やした。
グーグルのルーカス・ワトソン副社長は「ある化粧品会社の商品は、売り上げの80%を全購入者の1%から得ている。必要な人にだけ届けられる広告は企業にとって有効だ」と言う。
今年1月、米ラスベガスで開催された家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」では、韓国LG電子や台湾エイスース(華碩電脳)が最新版グーグルTVを搭載した機器をお披露目した。究極のテレビの実現はそう遠くはない。