エネルギーの現場を歩く(5)遊休地にメガソーラー続々…鹿児島に国内最大級 : 特集 : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
(左)建設が進む「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」。上は桜島(3日、鹿児島市七ツ島で、本社ヘリから)=久保敏郎撮影 (右)「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」の完成予想図(京セラ提供)
メガソーラーと呼ばれる巨大な太陽光発電所が各地で建設されている。
再生可能エネルギーの買い取り制度が始まったことを機に、塩漬け状態だった遊休地などで次々と着工し、早いところでは年内にも稼働する。ただ、太陽光だけが再生エネの中で突出する状態になっていることから、政府は太陽光を抑制する検討も始めている。
高性能パネル29万枚桜島を望む鹿児島市の錦江湾に、太陽光で国内最大級の「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」の建設が進んでいる。「向こうの端まで約1・3キロ・メートル。歩いて往復すると1時間半はかかりますよ」。敷地の端に立った現場責任者の京セラソーラーコーポレーション(本社・京都市)の北きた道弘さん(50)が説明する。
面積は127万平方メートル(東京ドーム約27個分)。そこに約29万枚もの太陽光パネルを敷き詰める。京セラと6社が昨年9月に着工し、今秋には出力7万キロ・ワットの巨大発電所が完成する。生み出す電力は約2万2000世帯分になる見込みだ。
安価な中国製パネルが市場に出回る中、ここで使われるパネルはすべて京セラ製だ。同社の技術力で独自の加工が施されており、より多くの太陽光を吸収できるという。よく噴火する桜島だが、火山灰が降っても雨水とともに流されてきれいになり、手間もかからないという。
工事は現在、約15%のパネルを並べ終えたところだ。未着工の更地では全地球測位システム(GPS)で測りながら、土地の高低差を4センチ以内に抑える整地が続く。北さんは「緻密な整地は限られた敷地に多くのパネルを置くためです。並んだパネルを横から見ても、全くうねっていないでしょう」と話す。
敷地は3辺が海に囲まれている。湾の入り口にあたる東と南側には高さ約8・5メートルの堤防がある。大地震発生時に想定される約6メートルの津波を防ぐよう対応した。
土地を有効利用大規模な敷地は遊休地で、IHIが所有している。かつては鉄の構造物を作る工場だったが、生産拠点の統合に伴って2002年に閉鎖され、その後は「有効な利用方法を見いだせない状態」(IHI)が続いていた。
転機になったのは、東京電力福島第一原発事故後の昨年7月に導入された再生エネ買い取り制度。10キロ・ワット以上の太陽光発電は現在、20年間にわたり1キロ・ワット時当たり42円で売れる。このメガソーラーでは九州電力に売電する予定で、売電収入は年間約30億円。総事業費は約270億円に上り、完成後にかかる経費を考えても十分に回収できる。
もともと工業地帯だったことから、高圧送電線がわずか400メートルのところを走り、接続費用がほとんどかからないというメリットもあった。全国的にも、こうした場所がメガソーラー建設の適地として注目されている。
再生エネの9割独占買い取り制度で認定された再生エネには、ほかに風力、地熱、水力、バイオマスがあるが、太陽光はこの中で“独り勝ち”状態だ。設備容量は昨年11月末現在で326万キロ・ワット(家庭用を含む)。再生エネ全体の約9割を占める。
その背景にあるのは、高い買い取り価格だ。1キロ・ワット時当たりの太陽光の買い取り価格は42円で、大規模な風力(23・1円)、地熱(27・3円)などと比べて高く、事業化した場合に採算が取りやすいとされている。
電気料金には現在、再生エネ促進の賦課金が平均で月87円、上乗せされている。買い取り価格の高い太陽光の普及だけがこのまま進むと、この賦課金が今後、跳ね上がっていく可能性がある。
このため経済産業省は新年度から買い取り価格を30円台後半に引き下げる検討に入った。同省新エネルギー対策課は「風力や地熱なども含め、バランスの良い再生可能エネルギーの普及を進めたい」としている。(吉良敦岐)
メガソーラー 出力が1メガ・ワット(1000キロ・ワット)以上ある太陽光発電所。再生可能エネルギーの買い取り制度の開始後、通信会社や商社も売電目的で参入を始めている。経済産業省によると、昨年11月末までに、約142万キロ・ワットの設備を制度で認定。広大な土地がある北海道が約39万キロ・ワットで最も多かった。廃止になる空港やゴルフ場での建設計画も進んでいる。太陽光パネルは、日本製が光を電気に変える効率で優れており、かつて生産量世界1位だったが、近年は価格の安い中国製や台湾製に市場占有率を奪われている。 (2013年2月18日 読売新聞)