(4)珪藻の幾何学構造の殻 CO2取り込み油に :日本経済新聞
電子顕微鏡で観察した実際の珪藻の殻(写真上、国立科学博物館提供)と実験室で自然にできた構造(同下、神奈川大の金仁華教授提供)
珪藻(けいそう)は単細胞の植物性プランクトンで、大きさはほとんどが0.1ミリメートル以下だ。「川や海にある石のぬめりは、珪藻が幾つも集まっている」と国立科学博物館の辻彰洋研究主幹は話す。
電子顕微鏡でのぞくと幾何学構造が広がる。珪藻の細胞を覆う殻だ。砂やガラスの主成分と同じ二酸化ケイ素(シリカ)でできている。殻の内部は有機成分で、温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を取り込んでいる。
「地球上のCO2を吸収する主人公は植物といわれるが、珪藻は同等の能力がある。重要な資源ももたらす」と神奈川大学の金仁華教授は言う。植物はCO2から糖を合成するが、珪藻は油を生産する。
金教授は珪藻の殻の幾何学構造がどのようにしてできるかを研究している。殻の内側にある有機成分を人工合成し、水と混ぜて容器に入れた。そこに人工シリカを混ぜると、約30分で珪藻の殻のような構造になった。
有機成分が仲立ちし、自己組織化という自然現象が起こったのだ。水溶液の温度や濃度を変えると、構造が変わってくる。「この機能を徹底的に調べれば、微小な分子を自在に設計できるようになる」と金教授は期待している。