2012/1/26
電力と並んで、今後の世界の二酸化炭素(CO2)排出量を大きく左右するのは輸送分野だ。石油消費の増加につながる新興国でのモータリゼーションと、石油消費を抑える自動車のハイブリッド化や電化。それぞれどのくらいの勢いで進展するかで、将来の環境は大きく変わる。
航空や海運のCO2削減という課題もある。国内の航空や海運による排出量は国ごとに全体の温暖化ガス削減目標の中で管理されるが、その枠外になっている国際便からの排出削減も重要なテーマだ。
航空の低炭素化では、日本の技術が大きな役割を担う。世界で運航するジェット機の数は、2030年までに2倍に増える見通し。石油価格が上昇する中で運航コストを抑える狙いもあって、航空会社は軽量で燃費のいい新型機への交代を急ぐ。新型機に欠かせないのは、東レの炭素繊維複合材など日本の部材だ。
海運では、甲板に太陽光パネルを設置し、大容量のリチウムイオン電池を搭載するハイブリッド船を三菱重工業などが実用化している。
燃料の転換にも注目すべきだ。究極のクリーン燃料はCO2ではなく水が排出される水素だが、水素を液化して安定した状態に保つ技術の商業的なハードルはなお高い。
欧州の航空会社はバイオ燃料を用いるテストを始めたものの、供給量の制約もあるので石油由来のジェット燃料に混合する形にとどまる。
最近、注目されているのは、CO2排出が石油より3割少ない天然ガスの活用だ。天然ガスを液体燃料にするガス・トゥー・リキッド(GTL)でケロシンをつくり、これを航空機の燃料に用いる。石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルなどが将来の市場拡大を見込んでいる。
船舶のエンジンの燃料を重油から液化天然ガス(LNG)に切り替える試みも始まった。川崎重工業、韓国の大宇造船海洋などが、それぞれ今月、国際的な認定団体から、LNGを燃料とするコンテナ船の設計の基本承認を得た。
燃料用LNGタンクを備える船の建造では、LNG輸送船で技術・ノウハウを蓄積した日本企業の強みが生かせるはずだ。LNGを燃料とする自動車運搬船やタンカーの開発を進める動きもある。
空と海の低炭素化につながる技術での優位の確立は、今後の日本の国際競争力のカギの一つにもなるだろう。
(花山裏)