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メモ「クラウド/東北から始まるイノベーション」

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クラウド

ビフォア・アフター:東北から始まるイノベーション - ITmedia エンタープライズ

[林雅之,ITmedia]

企業のICTを活用と若手IT技術者による東北発のイノベーションが、中長期的な震災復興の鍵となる。

 地域クラウドの導入やICTを活用した街づくりなど、震災復興に向けた取り組みが次々と起こっている。政府や自治体、民間企業や大学が連携した継続的な取り組みが、東北発のイノベーションを創出し、復興への足がかりになる。

「日本再生の基本戦略」で示される地域クラウドの導入

 政府の国際戦略会議は2011年12月22日、中長期的な政策指針「日本再生の基本戦略」を決定し(12月24日に閣議決定)、東日本大震災からの復興に加え、経済の活性化や中間層の復活などの施策を盛り込んだ。2011年度から2020年度に、平均で名目成長率3%程度、実質成長率2%程度を目指すという努力目標を掲げた。

 本戦略では、震災からの復興におけるICTやクラウドの活用についても方針が示された。グリーンや情報通信などのイノベーションを新たな産業・雇用の創出に結び付ける取り組みなどを強力に推進し、地域の強みを生かした被災地の復興を日本の最先端の地域モデルとしていくことを目指している。

 主な施策としては、災害に強い情報通信インフラの整備や地域クラウドを導入を通じて、安全・快適な地域の情報化と地方自治体の業務効率化を進める。震災復興とイノベーションの創出に当たっては、地域クラウドの導入が大きな鍵となるだろう。

ICTを活用した新たな街づくり

 総務省は2012年1月13日、ICTを活用した街づくりとグローバル展開に関する懇談会「第1回ICT街づくり推進部会」を開催した。本推進部会では、ICTの現状と今後の進化の方向性、ICTを活用した新たな街づくりのあり方、街づくりの実現に向けた推進方策などを検討した。

 街づくりに当たっては、災害に強いワイヤレスネットワーク、コミュニケーションを円滑にするブロードバンド、社会インフラ高度化などのためのクラウドサービス、センサネットワークなどを組み合わせたICTパッケージの実社会適用の重要性を示した。これらにより、今後深刻化する地域的・社会経済的な諸課題の解決や、経済活性化・雇用創出などの新たな成長に寄与することを目指す。被災地においては、ICTを実装導入した街を「JAPANモデル」としてグローバルに展開することが期待できるとしている。

ICTを活用した街づくり構想 出所:総務省 ICTを活用した街づくりとグローバル展開に関する懇談会ICT街づくり推進部会 2012.1.13

被災企業で始まるクラウドの導入

 ICTを活用した街づくりに際し、中長期的視点ではICTとエネルギーの融合が生み出す「スマートシティ(次世代環境配慮型都市)」に注目が集まっている。とはいえ被災地周辺の企業は、事業所や工場の建て直しや売上高が落ち込むなど、事業経営の悪化が深刻な状況であり、早期の事業の立て直しと経営の効率化を急いでいる。

 東北地域の社会基盤や産業の復興を目的とした「一般社団法人東北産業振興協会」は、クラウドによる情報化基盤を被災地域に普及させ復興に大きく貢献することを目的に、クラウドを活用した社会や行政に対する提案・提言、および仕組みづくりなどを進めている。

 気仙沼市や大船渡市の工場が被災した水産加工の阿部長商店(本社:宮城県気仙沼市)は、東北産業振興協会のサポートを受け、伝票入力業務や営業の情報共有にクラウドを活用し、経営の効率化を進めている。同社はクラウドの導入に踏み切った理由として、導入コストが安く、災害にも強い点を挙げている。また、事務業務を減らし営業に注力することで、震災後に半減した売上高の回復も目指している。

東北からイノベーションを生み出す

 仙台市や村田製作所、みやぎモバイルビジネス研究会、東北大学などの約10団体は、クラウドを活用した農業支援システムの導入を始める。宮城県沿岸の農地などで塩分や放射線、土壌温度をセンサーで測定し、計測値をクラウド経由でスマートフォンやタブレットから閲覧・共有できる仕組みを作り、被災地の中小農家が農業の再開や事業を継続できる環境を支援する。

 農家向けのソフトは、モバイルインターネットを活用した地方発のビジネスモデルの創出に取り組む「みやぎモバイルビジネス研究会」とAndroidアプリケーションの開発技術者の育成と能力向上を目指す「Fandroid EAST JAPAN」などが中心となって開発する。いずれも宮城県を中心とした若手IT技術者を中心とした団体だ。

 東北では仙台を中心に、震災復興と新たなイノベーションの創出を共通目的とした産業や教育機関の産学連携や、ITのみならずさまざまな業界の「人」と「人」、「サービス」と「サービス」をつなぎ、相互作用を生み出す取り組みが進められている。

 2011年6月19日には仙台で、若手のIT技術者が中心となって「ICT復興支援国際会議」が開催された。会議には政府や自治体、地元を含めたIT企業が一堂に集まり、ICTを活用した災害対応や復興事業のあり方を議論し、参加者は300人、Ustream視聴者は2万5000人を超えた。

 会議では、先述した「Fandroid EAST JAPAN」の設立や日経BP社が主催する復興に向けたスマートフォン向けコンテスト「A3togather」の開催など、東北の技術者を支援する取り組みが発表された。

 活動は一時的なものにとどまらず、その後も「ITで日本を元気に!」など復興と地域ビジネスの活性化にかかわるさまざまなイベントや勉強会が開催されている。

 クラウド関連では2011年10月10日に「ICT復興支援クラウドフォーラム」、地元産業との連携では2011年11月25日に「IT・農業による東北復興支援フォーラム」が開催されるなど、地元企業や団体との連携が始まっている。また、岐阜県大垣市や青森県八戸市との技術者同士の地域間交流も深まっている。さらに2011年10月30日には、世界に向けて東北の未来を語り発信する「TEDxTohoku」が東北大学の学生中心に開催されるなど、東北復興に向けた機運が高まっている。

東北の地からクラウドとイノベーションを

 東北が復興し新たな産業を創出していくためには、山積するさまざまな課題を解決していく必要がある。IT分野においては、クラウドなどを活用して事業の再出発や事業継続を図る中小企業と、復興と東北発のビジネスのイノベーションを創造する若手IT技術者の取り組みが、鍵となるだろう。

 2012年1月24日には、被災地で起業家らを支援している団体や企業でつくる「復興起業家支援協議会」が仙台市で発足した。復興や地域産業の発展を支える起業家を育成する仕組みづくりを目指している。

 これらの取り組みが政府や自治体、民間企業や大学と連携することで、東北発のクラウドの活用やイノベーションが創出され、復興への足がかりになることを期待する。

著者プロフィール:林雅之(はやしまさゆき)


ITmediaオルタナティブ・ブログ『ビジネス2.0』の視点

国際大学GLOCOM客員研究員(ICT企業勤務)

2007年より主に政府のクラウドコンピューティング関連のプロジェクトや情報通信政策の調査分析や中小企業のクラウド案件など担当。2011年6月よりクラウドサービスの開発企画を担当。

国際大学GLOCOM客員研究員(2011年6月〜)。クラウド社会システム論や情報通信政策全般を研究

一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) 総合アドバイザー(2011年7月〜)。

著書『「クラウド・ビジネス」入門

 

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