下記はドイツの教育事情ですが、日本はもっと先行しています。30年程の先行ではないかと思われ、この20年のていたらくはひどいものです。逆に漸く体制を立て直している気配もあり、既にすっかり私立学校の優位が確立してしまっているようです。地区地方別に教育制度の変更試行が実行され、成果が出て来ているようです。
例えば、京都市では小学区制度の高校全員入学割り振りから、堀川高校は全市から受験でき、他の高校も地区が中学区まで拡大されて、入学での競争が発生して切磋琢磨がスタートできました。これが10年程前のことです。結果漸く京大入学数が堀川で数十人、他の高校も3〜40年前には未だ及ばないのですが、2桁に上がって来ました。洛北高校では昔の京一中時代同様の中高一貫教育開始から7年経過、成果は確認されだしています。
大阪でも、中学区制区分で数校の入学競争はありましたが、近年公立校の質低下が顕著になって来ています。そうした流れの中での橋下さんの登場です。教育委員会攻撃に対する市民の賛成は、意外な程に多くありました。教育に対する危機感を市民が強く持っているからです。
ドイツのこの事情は、日本では既に過去の経験でありますが、早く立ち直り、人材教育をせねば、不況からの脱却は出来ないのです。今は団塊の世代からその直下の層の頑張りで新しき技術開発が相当のスピードで進んでいますが、年金問題とも同じく、たとえ少子化傾向であっても、質の高い教育実践が不可欠なのです。
教育改革遅れ人材不足「先生の質を考えれば、私立しかない」。ドイツのフランクフルト市に住む会社員のクリストフさんは最近、4歳の子どもを市内の私立幼稚園に入れた。卒園後は併設の私立小学校に入れるつもりだ。月謝は220ユーロ(約2万2000円)と高いが「子どもの将来こそ大事」と話す。
ドイツの教育の現場で、私立ブームが起きている。「10年前には考えられなかった」(独メディア)ことだが、幼い子供を持つ親はカフェや公園で進路を真剣に相談し合う。
背景にあるのが、公立教育への不安だ。クリストフさんは「公立校の教師はやる気が見えない」と批判する。むろんこの図式にすべての公立校があてはまるわけではないが、不安に感じる親が少なからずいるのは確かだ。
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6割の独企業が人材不足を「技術革新の危機」と見る(独アウディの職業訓練風景)
引き金を引いたのが2000年の「ピサ・ショック」だ。経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳を対象に実施した国際学生試験プログラム(PISA)のテストで、ドイツは得意だったはずの数学でOECDの平均点を下回った。教育制度への不安を吸い上げたのが補習塾で、新たに年15億ユーロの市場が誕生した。
「従来の教育システムで十分な学力が身についているのか」。ピサ・ショック世代が就業年齢を迎えた今、こんな疑問が産業界で強まっている。
ドイツ商工会議所の最近の調査では、4割近い企業で2カ月以上、技術者が必要数に達していない。理数系人材の需給ギャップは昨年12月時点で18万人と1年前に比べ8割増えた。「独経済を支える技術革新力の危機」。大手企業の6割がこう訴える。
教育システムは変わっているのか――。独誌シュピーゲルは「我々が学んだのは、補習塾か私立教育に金を掛けろということ」と手厳しい。
教育改革に手をこまぬいているわけではない。しかし、ドイツでは教育制度は各州政府の所管。連邦政府の介入を嫌がる地方分権の現行制度は、国民の思想を統一しようとしたナチス・ドイツ時代の反省から取り入れられたという歴史がある。
今では州ごとに学力格差拡大や学校制度の乱立など負の側面が顕在化した。通常、ドイツの子どもは小学校(4〜6年制)卒業後、中高一貫教育の「ギムナジウム」や職業訓練の「ハウプトシューレ」など将来の希望に応じて3つの学校に分かれる。
しかも、州ごとに教育改革がまちまちなため最近は10種類超の学校が乱立している。各学校の役割を親が理解するのが難しいほどで、授業への目配りはおざなりとなり、生徒の学力水準が低いなどの問題校は全体の2割に達するという。独政府の移民流入政策によってドイツ語が話せない子どもの増加も公立教育の難しさとなっている。
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理系を中心とした人材不足は独経済の将来に影を落とす。例えば、再生可能エネルギー業界。メルケル首相は原子力発電から再生可能エネへのシフトによって「今後10年間で80万人の“グリーンな雇用”を生み出す」と打ち出したが、政策転換を支える技術系の人材は足りない状態だ。業界団体は「今のままでは脱原発もままならない」と警鐘を鳴らす。
電気自動車(EV)関連技術の開発でも8割の企業が人材不足を指摘している。米国や中国とのEV開発競争で出遅れる可能性すらある。
今後は少子高齢化が進み、ますます若手技術者の確保が難しくなる。企業は高齢者の活用や女性技術者の育成も検討するが、一朝一夕というわけにはいかない。欧州債務危機が拡大する中、唯一の“勝ち組”とされる技術先進国が抱える不安は小さくない。
(フランクフルト=下田英一郎)