米新興ネット3社躍進 10〜12月、利用者拡大で増収 損益は明暗分かれる :日本経済新聞
【シリコンバレー=奥平和行】2011年に株式を上場した米主要新興インターネット企業の11年10〜12月期決算が14日、出そろった。クーポン共同購入サイト最大手グルーポンの売上高が前年同期の3倍近くに急増するなど各社とも利用者拡大を追い風に大幅な増収を達成した。一方、事業拡大や新規株式公開(IPO)に伴う費用の増加により損益では明暗が分かれた。
14日に発表されたオンラインゲーム大手ジンガの業績は売上高が前年同期比59%増の3億1123万ドル(約244億円)、最終損益が4億3500万ドルの赤字(前年同期は4299万ドルの黒字)だった。上場に伴い従業員に割り当てた譲渡制限付き株式に関する費用を計上したのが損益悪化の主因。実質1株利益は0.05ドルとなり市場予想の0.03ドルを上回った。
11年半ばに利用者が伸び悩み成長鈍化への懸念もあったが、10〜12月期は前年同期比23%増の2億4000万人(月間平均)に増えた。同日のアナリスト向け会見でマーク・ピンカス最高経営責任者(CEO)は、同社が収益源とするゲームで使う「バーチャルグッズ」について「11年に90億ドルだった市場規模が14年には150億ドルに拡大する」と説明した。
ソーシャルゲーム大手としてジンガの上場は注目を集めた(昨年12月)=ロイター
グルーポンは10〜12月期の売上高が前年同期の2.9倍、ビジネス向け交流サイト(SNS)のリンクトインも同2.1倍にそれぞれ増えた。両社とも利用手数料や広告収入などが増加し、リンクトインは純利益が同30%増加。一方、グルーポンは海外での拠点増に伴う税負担の増加が響き最終赤字が続いた。
12年はSNS最大手フェイスブックの上場が計画され、米ネット企業の過去最大のIPOとして市場の関心が高い。11年上場の3社はフェイスブックと事業上のつながりが深かったり、収益構造が似ていたりするため、各社の業績や株価はフェイスブックの「先行指標」としても注目を集めている。直近の株価はリンクトインとジンガが公開価格を上回っている。
米ネットのIPO、昨年倍増 1億ユーザー 起爆剤 :日本経済新聞
米インターネット企業の新規株式公開(IPO)が再び増加している。2011年はオンラインゲームのジンガなど24社に達し、ネット検索最大手のグーグルが上場した04年以来の水準になった。各社は設立から数年と歴史は浅いが、既に1億人を超す利用者を確保。売上高も増加基調を維持している。ただ株価が伸び悩むなど不安要素もある。(シリコンバレー=奥平和行)
「IPOにより、ゲームを通じて世界中の人びとを結びつけるという目標実現に向けた取り組みを加速する」。昨年12月16日、ジンガが米サンフランシスコの本社で開いた式典で、同社のマーク・ピンカス最高経営責任者(CEO)はこう語った。
ジンガは上場に際して市場から10億ドル(約770億円)を調達した。11月に上場したクーポン共同購入サイト最大手グルーポンを上回り、米ネット企業の調達額としては04年のグーグルの16億7000万ドルに次ぐ水準になった。
7年ぶり高水準
11年は欧州債務危機による株式市場の混乱があったものの、米ネット企業のIPOは7年ぶりの高水準だった。米調査会社のルネサンス・キャピタルによると、11年の米ネット企業のIPOは前年の2.2倍にあたる24社。12年も200社近くが上場の準備を進めているほか、交流サイト(SNS)最大手のフェイスブックが4〜6月期にも上場する見通しだ。
SNSを通じて遊ぶ「ソーシャルゲーム」の最大手であるジンガは世界で2億2700万人(11年7〜9月期の月間平均)が利用する。都市の開発を競う「シティビル」などが主力で、11年11月に公開した城を築く「キャッスルビル」は6日間で約500万人の利用者を獲得したもようだ。
ゲームそのものは基本的に無料だが、ゲームの中で使う「アイテム」の販売を収益源としており、11年7〜9月期の売上高は前年同期比80%増の3億682万ドルとなった。ジンガに加え、リンクトインやグルーポンなど11年に上場した主要ネット企業に共通しているのは1億人を超す利用者を抱え、売上高の成長が続いていることだ。
「3つの多様な収益源が成長している」。5月に上場したビジネス向けSNS、リンクトインのジェフ・ウェイナーCEOは胸を張る。リンクトインは米国を中心に求職や求人、ビジネス上の人脈作りの道具として普及しており、1億3000万人超が利用している。
同社は企業などから徴収する求職・求人関連サービスの手数料が第1の収益源。11年7〜9月期の売上高のうち51%が手数料だった。さらに詳細な会員情報を閲覧するために必要な有料会員からの会費収入と、広告の売上高が残りを占めており、バランスの良さが同社の売りだ。
バブルとは一線
11年のネット企業の相次ぐ上場に対しては一部で「ネットバブルの再来ではないか」との懸念も浮上したが、上場企業数でみると1999年の212社や2000年の114社よりも1ケタ少ない。米国ではエンロン事件などを機に上場へのハードルが高くなり、株式市場も売上高など経営実態が伴わない企業を排除しており、10年前とは様子が異なる。