伊藤忠、食用植物使用しない新バイオ燃料を製販 米社に出資、高騰の穀物原料を回避 アジアに生産拠点 :日本経済新聞
伊藤忠商事は原料に食用植物を使わない第2世代のバイオエタノールの事業化に乗り出す。製造技術を持つ米ベンチャーと提携し、米国以外で製販事業を展開する。バイオエタノールは需要が拡大しているが、現在はトウモロコシなど食用植物を原料としており穀物価格高騰の一因となっている。伊藤忠は第2世代燃料の需要拡大が期待できるとみて、10年後に約1千億円の売上高を目指す。
米バイオベンチャーで第2世代バイオエタノールの製造技術を持つジーケム・インコーポレーテッド(コロラド州)にこのほど出資した。出資比率は数%とみられる。ジーケム社は米国で独自に事業展開するが、伊藤忠は中国や東南アジア、南米やオーストラリアなどで需要を開拓する。
まずアジアに生産拠点を設ける計画。現地の化学メーカーなどとの合弁を想定し、年産40万キロリットル程度の製造工場を2014年をメドに稼働させる方針だ。この生産規模の工場だと300億円の総事業費がかかるため、伊藤忠はこれを合弁先と分担して負担する。
ジーケム社はシロアリの腸内細菌から取れる酵素を利用し、木材やワラなどの農業残さからエタノールを精製する技術を持つ。第2世代の競合技術に比べ、エタノールの収率が約4割高いのが特徴。米エネルギー省(DOE)の開発支援対象企業となっている。12年末にも米オレゴン州で年1千キロリットルの試験生産を始め、14年末に同州で年間約10万キロリットルの量産工場の建設を計画している。
「第2世代」は、ポプラの木などを原料に(ジーケム社提供)
経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)によれば、バイオエタノールの世界生産量は13年までに年率7%前後、その後も年率3〜4%で伸びる見込み。一方、穀物価格は11年に1990年代の約3倍の水準となり、食物を使わない第2世代バイオエタノールへの期待は高い。
第2世代の生産量は20年に全体の約10%を占める見込み。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルや英BP、米化学大手のデュポンなども技術を持つベンチャーと組んで試験生産などに取り組んでいる。
日本勢も国内向けにJX日鉱日石エネルギーや三菱重工業など6社が牧草などを原料に実証試験に着手。双日と日立造船が中国で実証事業に参画するなど実用化をにらんだ動きが広がっている。
伊藤忠はサトウキビを原料とするバイオエタノールの生産・販売については米穀物メジャーのブンゲとブラジルで合弁事業を展開中。今後需要が高まるとみて、第2世代への参入も決めた。