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メモ「 スマートタウン/被災地で進む環境配慮の町づくり」

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上手く纏まっていますので、コピペです!

これも元気のでる記事です。東日本大震災の被災地が、先進的な再エネ地域に生まれ変わりつつあります。「スマートタウン」化する分譲住宅、スマート農場、環境未来都市、そしてがれきを使ったバイオマス発電などが次々登場してきていますね。 

 

復興ニッポン

被災地で進む環境配慮の町づくり スマートタウンの在り方を模索

ECO JAPAN2012/03/08
ECO JAPAN

取材・文/藤田香(日経BP環境経営フォーラム)

 

被災地では「スマートタウン」を標榜する町づくりが始まっている。エネルギーを管理して緊急時に備えるだけでなく、コミュニティーの再生も担う。

 東日本大震災から1年を迎え、被災地では新しい町づくりが始まっている。エネルギーを管理するスマートハウス(環境配慮型住宅)が立ち並び、バイオマスエネルギーを活用したり、生物多様性にも配慮した「スマートタウン」があちこちに登場しだした。

 仙台駅から車で約15分。郊外の造成地で、「スマートコモンシティ明石台分譲中」の看板が目に飛び込んでくる。昨年12月に積水ハウスが売り出した大型分譲住宅地だ。431戸の分譲地の一角に、同社のスマートハウス「グリーンファーストハイブリッド」が7棟並ぶ街区がある。

 このスマートハウスは太陽電池と家庭用燃料電池「エネファーム」、8.96kWhの蓄電池を標準装備し、HEMS(住宅エネルギー管理システム)でエネルギーを制御する。平常時には太陽電池と燃料電池で発電し、非常時には蓄電池の電力を使うことで、商用電力に極力頼らない家にしている。それにより、年間の光熱費を2万円程度に抑え、CO2排出量も抑制した。地震の揺れを制御するシーカス構造も採用し、災害に備えている。

積水ハウスの仙台市の分譲住宅地。太陽電池、燃料電池、蓄電池を標準装備したスマートハウスが並ぶ
写真/藤田香 家と家の間に円形広場を設け、住民同士の交流も促す 写真/藤田香

 「3.11で町が停電し、闇と寒さがトラウマになった人は多い。非常時にも電気が使え、災害に強い家を求める声は増している」と、積水ハウス仙台支店の佐藤満長支店長は強調する。3月末には住宅が完成、早ければ5月頃から入居が始まる。東日本大震災の被災者の入居も見込まれる。 

 被災地の新しい町に求められるのは、エネルギーの自給自足だけではない。人と人の絆、コミュニティーの再生、自然との共生も大切な要素だ。そこで、7棟の家の真ん中に円形の広場を設け、近所同士でバーベキューを楽しむなど交流できるようにした。各戸には家庭菜園用のボックスガーデンを設置。庭木に在来種の樹木を植えて町に生態系のネットワークを作る「5本の樹」計画も進めている。

 「人と人の縁をつなげる仕掛け作りを進めていく」と佐藤支店長は力を込める。3月から販売する第2期では20〜25棟をスマートハウスにする予定だ。

 仙台市では、津波の被害を受けた沿岸地域の人々が集団移転する候補地でも、スマートタウン作りが始まっている。その1つが宮城野区田子西地区。仙台市が今年2月に集団移転候補地として挙げた8カ所のうちの1カ所である。ここでは、国際航業が「田子西エコモデルタウンプロジェクト」を進めている。

 もともとこの場所で2009年度から土地区画整理事業を進めてきたが、震災後に、急きょ仙台市の集団移転候補地に浮上した。「低炭素の町という当初計画を一部見直し、災害に強いエコタウンの要素を盛り込んだ」と、国際航業東日本事業本部長の上野俊司取締役は言う。

 仙台市による約180戸の復興公営住宅、戸建て住宅、複合型商業施設などを建設する。復興公営住宅は2012年度に着工の予定。戸建て住宅の一角はスマートヴィレッジ街区にする。ここではスマートハウスを建設し、再生可能エネルギーによる発電と蓄電池を組み合わせて住民同士がエネルギーを共同利用できるようにする。町全体でCO2排出ゼロも目指す。

 再生可能エネルギーの発電で生まれた環境価値を地域通貨として流通させるほか、集団移転した人々と元の地域住民がコミュニティーを形成できるよう農地や緑地を通じた交流も仕掛けていく。「自治会に代わる“タウンマネジメント組織”を作り、共有設備の管理や、街並みのルール作り、人と人をつなぐ役目などを担う」(上野本部長)ことで、住民の帰属意識を高め、絆を深めてもらう。

 

国際航業が仙台市田子西で進めるエコタウン事業。復興公営住宅、戸建て住宅、商業施設から成る。スマートヴィレッジ街区を設ける。太陽光や地中熱などによる発電と蓄電池を組み合わせ、エネルギーを共同利用する

IBMやカゴメがスマート農場

 農業園芸団地を造り、再生可能エネルギーやICT(情報通信技術)を活用して野菜を栽培する「スマート農場」の試みも始まった。昨年12月に仙台市と地元農業法人の舞台ファームなどが、日本IBMやカゴメとともに「仙台東部地域6次化産業研究会」を立ち上げ、計画を推進している。

 津波で塩害を受けた農地は復旧に時間がかかる上、後継者不足で耕作を再開できない場所もある。そこで、ハウスによる水耕栽培(養液栽培)で野菜の生産・加工・流通を一貫して行う工場の建設を目指す。

 野菜はハウス内で自然光で育てる。商用電力のほか太陽電池と蓄電池の電力を利用し、LNG(液化天然ガス)ガスタービンエンジンともみ殻ボイラーを熱源にしてハウスを暖める。LNGから発生するCO2は植物の栄養分にもなる。

 生産時の日射量や温湿度、電力情報をはじめ、流通段階の情報はICTで管理する。「これまでの農業は熟練者の勘に頼ってきたが、ICTを使ってエネルギーや環境情報、生産、品質など多くのデータを管理することで、生産の安定性を確保できる。こうした分野に当社の技術も生かせる」と、日本IBM東北復興支援事業部の木崎重雄事業部長は期待する。水耕栽培のノウハウはトマト生産で実績があるカゴメが指導する。

日本IBMやカゴメが仙台市と進める大型スマート野菜農場。ハウスで水耕栽培し、ICTで管理しながら生産・加工・流通を一貫して行う  

 スマート農場の広さは10ha以上で、複数の野菜を栽培する。地元の農家との連携や若い人材の育成も行う。ここで水耕栽培を学んだ人が事業をフランチャイズ化したり独立することや、地元農家が自分の畑で栽培した野菜をこの農場で加工・出荷するといった連携も視野に入れている。敷地内には市民農園も設け、地域住民が農業を体験する仕組みも作る。

 「この施設をプラットフォームにし、農業の多様性を実現する場にしたい」と小川祐生担当部長は目を輝かせる。仙台市も「新しい農業のイノベーションモデルになれば」と前向きだ。2月中旬にはこの計画を国の農業特区に申請。申請が通れば法人税の減税などの優遇が受けられる。

●被災地で進むスマートタウンやエコタウンの主な計画例

環境未来都市への期待

 被災地では、国が進める「環境未来都市」構想も始まっている。環境未来都市とは環境問題や超高齢化社会に対応するために国が選んだモデル都市で、昨年12月に被災地からも6カ所が選ばれた。その1つが、岩手県大船渡市・陸前高田市・住田町の気仙広域環境未来都市である。

●気仙広域環境未来都市の概要

写真/グランパ(植物工場)、藤田香(その他5点)

 ここにはリチウムイオン電池工場を誘致し、蓄電池を付帯したメガソーラー発電所を建設するほか、電力消費拠点にスマートメーターを配置して地域全体のエネルギー消費を最適化する町づくりを行う。

 死者・行方不明者1800人以上と岩手県で最も被害が大きかった陸前高田市では、高さ12.5mの防潮堤を建設し、数カ所の高台に分かれて移転地区を設け、それぞれを交通でつなげる。「病院地区、学校地区、市役所や消防署のある地区を、電気バスなどが循環して結ぶ構想を考えている」と陸前高田市の村上幸司・商工労働係長は説明する。

 塩害で当面耕作が難しい農地では、農業法人グランパ(横浜市)と協定を結び、東京ドームのようなエアドーム式の植物工場を建設する。太陽光発電と蓄電池の電力を自動制御し、レタスなどの葉物を自然光で水耕栽培する。「まずは8棟のドームを建設するが、いずれ20棟以上に増設する予定だ」と村上係長。

 水産業の盛んな大船渡市では、水産加工の製氷工場や超低温倉庫をエネルギー管理し、水産業者が共同利用する仕組みを検討している。

 森林バイオマス資源の豊富な住田町は、2市を後方支援する。住田町は森林の伐採から加工までを一貫して行う町づくりを進めてきた。製材所、集成材工場、プレカット工場から成る木工団地があり、プレカット工場では三井ホームなどの住宅部材を生産している。震災直後には木造仮設住宅もいち早く建設した。製材所ではチップを生産し、製紙工場に出荷。端材やおがくずは木くず焚きボイラーの原料にし、木材乾燥設備の熱源にしている。暖房用ペレットも生産している。

 環境未来都市構想では、地元産材を利用し、地元工務店による環境配慮住宅団地の開発も行う。「林地残材を有効活用するため、チップの生産も拡大したい。製紙原料やボイラー燃料などにチップのさらなる需要が見いだせれば有難い」と、住田町産業振興課の佐々木伸也林政係長は期待している。

震災がれきをエネルギー源に

 木質バイオマス資源を復興に役立てるという点では、石巻市の日本製紙の例がある。石巻市では「石巻復興協働プロジェクト協議会」が昨年10月に発足。再生可能エネルギーを活用したエコタウン作りを目的に設立され、日本製紙や日本IBM、東芝などが参加している。

 日本製紙石巻工場はバイオマスボイラーで4万kWを発電し、東北電力にも供給してきた。地域供給エネルギーの1つの候補になる

 中心企業である日本製紙は、「農業施設への熱の供給企業として協議会から期待されている」という。同社石巻工場は20万kWを自家発電で賄い、そのうち4万kWをバイオマスボイラーで発電してきた実績を持つからだ。同社は震災後にバイオマスボイラーを最優先で復旧させ、昨年8月から木質系震災がれきも受け入れてきた。余剰電力は東北電力に供給してきた。

 現在も木質系震災がれきを毎月4000〜5000t処理している。2012年度末までに受け入れるがれきは合計15万〜25万tに上ると推定される。石巻市エコタウンが目指す地域エネルギー供給システムの構築に、バイオマスボイラーのエネルギーは要になるに違いない。


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