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メモ「起業は若者の特権ではなく、年寄りのもの/田村耕太郎」

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田村耕太郎の「坂の上に雲はない!」

起業は若者の特権ではなく、年寄りのもの! パワーより経験がものを言う時代が到来した|田村耕太郎の「坂の上に雲はない!」|ダイヤモンド・オンライン

かつては日本も「起業大国」だった
起業のイメージと現実には乖離あり

 今回は「高齢者こそ起業せよ」と提言したい。高齢者の方が起業して成功する可能性が高いのだ。日本経済の構造改革のため、超高齢化社会を乗り切るため、高齢者による起業ブームを待望する。

 「アメリカでは起業家は賞讃されるが、日本では起業家に敬意が払われない」という意見は、もはや迷信だ。日本でも起業家に対する敬意が高まっている。アメリカでの起業関連調査会社GEM社によれば、成功した起業家を尊敬する人の割合は、99年にアメリカでは91%だった。すごい数字だ。一方当時の日本は8%。全く逆だった。確かに当時なら上記の迷信が事実であっただろう。

 それが2008年には双方とも約50%でほぼ並んだ。ITバブル崩壊やエンロン事件を経て、アメリカでは起業家への尊敬が急落し、日本ではホリエモン事件にもかかわらず、逆に急上昇した(Global Entrepreneurship Monitor 調査)。

 起業に関する風評と事実は、データを見てみるとけっこう大きく違っていたりする。現在日本は廃業率が開業率を上回っているが、75年〜85年までは、開業率が廃業率を上回っていた。高度成長期の末期からバブル期の初めまで、日本は起業大国だったのだ。

高齢化社会を
乗り切るためにも

 15歳〜64歳までの“起業家活動率”が最も高い国は、意外にもタイ。次いで中南米国家が続く。タイでは15歳〜64歳までの人口のうち、26%以上が起業家活動を行っている。中国もその数字は高くて17%。起業大国というイメージがあるアメリカは、意外にも低くて9.5%。大企業がなくて、雇用の受け皿が不足しているからだろうが、新興国の方がずっと起業家精神が高いのだ。日本はその半分以下の4.4%。今後、大企業がグローバル展開を進めることを考えれば、雇用の受け皿としても日本の起業をもっと盛んにすべきである。

 今後我が国では、高齢化が一層進み、高齢化率が4割を超える超高齢化社会がやってくる。年金も医療も、現在の社会保障制度は今後維持できない。これからは元気な高齢者の皆さんに実力を発揮し社会に付加価値を生みだしていただきながら、社会保障を維持しなくてはならない。そういう意味でも起業の中でも今後は、高齢者の起業を盛んにすべきである。

 しかしながら、起業といえば、“若者の特権”というイメージがある。テクノロジー系のスタートアップの成功例と言えば、『グーグル』『フェイスブック』『ツイッター』『YouTube』これらは20代、30代の若者が起業した代表例でもある。

 こうした若き起業家が有名になるにつれ、「ハイテク起業で成功する人は若くて天才的な頭脳の持ち主」というイメージが強まった。一方、時代遅れの中高年に対しては、「スキルも錆びついていて、リスクも取れない人たち」というイメージが出来上がった。実は最近まで米国でもそういうイメージがあった。

『グーグル』『フェイスブック』『ツイッター』『グル─ポン』といった10代・20代の起業家が台頭しつつある今、米ベンチャー投資家の間でも「24時間働く20代に投資できるのに、なんで家族や借金がある40代に投資するのか」という“起業に対する年齢差別”の概念を生んでしまっていたのだ。

高齢者起業ほど成功!
――アメリカでの調査

 しかし最近、実は起業大国アメリカでも起業は若者の特権ではないということがわかってきた。米カウフマン財団が面白い調査結果を発表している。

 この調査によると、アメリカの起業の現状は「高齢者が主役」だという。テクノロジー系の分野で起業する人の平均年齢は意外にも39歳。『ザッカーバーグ』や『ビル・ゲイツ』のような大学生起業家イメージとは違う。またここ数十年間のデータによると、起業する確率が最も高いのは55〜64歳のシニア層。向こう見ずで起業家向きのイメージのある20〜34歳は起業率が実は一番低い。55歳以上の人が起業を成功させる確率は、20〜34歳の人より2倍近くも高い。

 この背景にあるのは長期雇用の減少と高齢化。転職の連続というイメージのあるアメリカビジネス界だが、それは35歳以下の話。35歳以上では大企業を中心に長期雇用が優勢であった。ところが、不景気とグローバル化の影響で長期雇用が激減している。一方、寿命は伸び、元気で働けるのに仕事がないシニア層が増えているのだ。そういう人たちが起業しているというのだ。

 成功したハイテクベンチャー549社を調査した、デューク大学のビベック・ワドワー教授によれば、平均的なハイテク起業家は配偶者と子どもを持ち、他人のために働くことに飽きた40歳のエンジニアかビジネスマンだ。さらに、カウフマン財団のデータと同じく、起業時の年齢が高ければ高いほど成功率は高いという。

 別の調査も高齢起業家の成功率の高さを裏付ける。中高年の起業家は高度な技術的知識を備え、顧客のニーズを熟知しマーケティングの技能を持ち、支援者のネットワークを持っているからだ。

 カリフォルニアのシンギュラリティ大学のヴィヴィック・ワディワ教授の、年商100万ドル以上の500社のハイテク起業の調査によれば、成功するハイテク起業家の平均年齢は39歳。50歳以上の起業家の成功率は25歳以下の成功率の2倍。60歳以上の成功率は10代のこれまた2倍である。

 シニア起業家があまり話題にならないのは、地味な会社を立ち上げることが多いからだ。生物工学やエネルギー、IT(情報技術)機器などの分野での起業が目立つ。企業間取引が主体の場合も多く、消費者に知られることはほとんどない。

 フォーブス誌によると、アメリカで最も成長力の高いハイテクベンチャー企業は太陽光発電大手の『ファースト・ソーラー社』。同社の母体は84年に68歳の発明家が設立した企業だ。2位はネットワーク関連会社の『リバーベッド・テクノロジー』で、創設者の設立時の年齢は51歳と33歳だった。

経験なくして革新なし!

 インターネットさえ、もはや若者の独壇場ではない。SNS上などで提供されるソーシャルゲーム大手の『ジンガ・ゲーム・ネットワーク』の共同設立者でCEO(最高経営責任者)のマーク・ピンカスは44歳。同氏が『ジンガ』を立ち上げた時は41歳。アリアナ・ハフィントンが『ハフィントンポスト』を立ち上げた時は54歳だ。デューク大学のワドワーは、生物工学やエネルギーのような分野では起業家の平均年齢はさらに高いと予測する。

 今後付加価値を生むのは複合技術。ロボット工学とバイオテクノロジーとか、医学とナノテクとか複数の分野を横断した技術の融合が求められる。そんな時代に、革新的なアイデアを生むには相当な経験が必要である。

 ノースウエスタン大学のベンジャミン・ジョーンズ教授とオハイオ州立大学のブルース・ウェインバーグ教授がノーベル化学・物理・医学賞の受賞者のキャリアを研究。一世紀前より今は年齢が高くなっている。前述したとおり、有望な技術は、異なる分野の融合によってできるからだ。だから結果が出るには時間がかかる。

 普通の労働者の場合でも経験の力は大きい。ドイツの大手企業が年齢層別に品質改善への貢献度を調査。その結果、シニア労働者は手順や工程の効率化だけでなく、革新的なアイデアについても、若い労働者より貢献度が高いことが分かった。革新性には経験も必要なのだ。

 この調査に携わった、ドレスデン応用科学大学の経済学者ビアギット・ファーボンクによれば、調査結果が出た後、この企業は早期退職制度を段階的に廃止することにしたという。

 レイ・クロックが『マクドナルド』を立ち上げたのは50代。カーネル・サンダースが『ケンタッキーフライドチキン』を立ち上げたのは60代半ば。ビル・ゲイツが『フィランソロピー』に目覚めたのもマイクロソフト会長を退いた50代からだし、スティーブ・ジョブズは人生の後半に創造力を発揮した。経験の豊富な人たちの起業にもっと期待をしよう。

 若くて向う見ずな連中のエネルギーが作り出すものも有用だが、経験と人脈と余裕を持った人たちが生み出す価値は計り知れない。高齢者の起業が経済構造や社会をよりよい方向に変えていくことを心から期待したい!


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