2012.4.17朝日新聞「ひと」紹介の「万葉こども賞コンクール」最優秀賞受賞者の松田梨子さん…富山市立堀川中学校2年生…心得のある母親と姉妹で小さな時から切磋琢磨、日常の生活の中で自然に創り上げられた感性です!
「第4回万葉こども賞コンクール」入賞作品決定
応募総数 作文の部 1,117件(小学生 94件、中学生 1,023件)
最優秀賞 松田 梨子 富山県富山市立堀川中学校 1年生
絵画の部 289件(小学生148件、中学生 141件)
最優秀賞 堤 千莉 奈良県桜井市立朝倉小学校 2年生
受賞作:
松田梨子
冨山在住富山市立堀川中学校1年
題材とした万葉集
春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける
万葉集巻八―一四二四 山部宿袮赤人
『私は、この歌がとても好きだ。春の日ざしの暖かさや、やさし
いすみれの匂い、そして広い野原に寝転んだ時に感じる草のやわ
らかさまで、一度に感じることができるからだ。そして、すみれ
を摘みに来た山部赤人が、野山のあまりの懐かしさに、そのまま
一晩泊まってしまったという、ゆったりしたような、のんびりし
たような感じが心地良い。自由だなあと思う。赤人の行動が自由
というより、赤人の心がとても自由だと感じる。野山が懐かしか
ったから、そこで一泊というのは、現代を生きる私には到底でき
そうにないことだ。
中学生になってから、私は何となく、いつも何かに縛られてい
るような気がして、思いきり草の上に大の字になることができな
い日々が続いている。小学生の頃は、ひたすら遊んでいたのに、
中学生になったとたんに先生達は「受験はそう遠い先のことでは
ないんですからね」と言うようになった。「受験」を常に頭のどこ
かで意識し、緊張しているうちに、時間などの自由だけでなく、
心の自由も私は失くしかけていたのかもしれない。
そんな時、この歌に出会った。赤人も、宮廷に仕える歌人とい
う職業で、たくさんの苦労がきっとあったと思う。でも、心まで
縛られることなく、自分の目で見た美しい自然や、耳で聞いた自
然の声を、歌という形で数多く残している。何より、自分の心の
声を素直に聞くことができる「心の自由」が素敵だと思う。そし
て、これは自分をしっかり持ち続ける強さなのだとも思う。
私にとってもう一つ、この歌の魅力がある。不思議なことに、
この歌の情景と、私の大好きな物語、モンゴメリー作の『赤毛の
アン』の情景が、ぴったり重なるのだ。歌を思い浮かべて、すみ
れの匂いに包まれた時、私は空想好きな楽しい主人公アンが暮ら
すカナダの美しい村を思い出す。なぜ、日本とカナダの景色や空
気が私の中で一つになるのか、初めはわからなかった。心のまま
野山で夜を明かす歌人赤人と、持ち前の想像力で心豊かに暮らす
アン。もしかして私は、二人からメッセージを受け取ったのかも
しれない。それは「心は自由なんだよ。自分の心に素直に生きて
いいんだよ」ということ。私は今、赤人とアンと並んで、すみれ
の咲き乱れる野原にのんびり寝転んでいる気分だ。』
堤 千莉
奈良県桜井市立朝倉小学校 2年生
題材とした万葉歌
君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く
万葉集 巻8−488 額田王