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東京国立博物館ガイド 『トーハクなび』(Androidアプリ)
koozyt さんが 2012/04/19 に公開
東京国立博物館とISID、クウジットは、位置情報などのIT技術の活用により東京国立博物館における鑑賞体験をより深めることを目的に、「トーハクなび共同研究プロジェクト」を発足しました。『トーハクなび』は、本プロジェクトの一環として配布され、東京国立博物館総合文化展をめぐる見学コースを紹介するアプリケーションです。
『トーハクなび』は東京国立博物館(総合文化展)の来館者に向け、より豊かな鑑賞体験を提供することを目指しています。一部のコースでは、コースに沿って歩くだけで建物や展示室に応じた概要説明が音声や写真、動画を通して自動で提供されます。また、蒔絵や陶磁などの伝統工芸の制作工程をタッチ操作で体験いただける、インタラクティブなコンテンツやスタンプラリーも収録しています。
開発役割分担:
コンテンツ監修:東京国立博物館
企画・開発: 株式会社電通国際情報サービス、クウジット株式会社
コンテンツ制作協力: 本條陽子 (ソニーコンピュータサイエンス研究所)
デザイン: 長谷川 踏太(TOMATO)
「トーハクなび」アプリダウンロード:
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.tnm.tohakunavi
「トーハクなび」アプリについて:
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1467
「トーハクなび共同研究プロジェクト」について:
http://webarchives.tnm.jp/archives/contents/23
IT(情報技術)を駆使した美術鑑賞の機会が広がっている。創作の過程を追体験したり、あたかも文化財に触れているように感じたり。実物の作品をよりリアルに体感できるのが魅力だ。
画面上で絵の背景や衣装を変えられる装置。絵の男児が日本のはっぴを着ることもできる(東京・五反田のルーヴル―DNPミュージアムラボ)
ゴヤ「ルイス=マリア・デ・シストゥエ・イ・マルティネス」(1791年、油彩、カンバス、118×86センチ、ルーヴル美術館蔵)(C)Photo DNP/Philippe Fuzeau
東京国立博物館の「トーハクなび」の画面
「青い服の子供」と通称される1枚の肖像画。1791年にスペインの画家ゴヤが描いた愛らしい絵が、東京・五反田のルーヴル―DNPミュージアムラボの「ゴヤの《青い服の子供》ルーヴル美術館のスペイン絵画コレクションに入るまで」展で日本初公開されている(10月28日まで)。
仏の学芸員参加
ピンクがかった床の色や衣装の深い青色が印象的なこの油彩画は何層の絵の具やニスが重ねられているのか。画家がこの構図で描いたのはなぜか。フランスのデザイナー、イヴ・サン=ローランらが所有した絵はどんな経緯でルーヴル美術館に収まったのか――。同展はそうした疑問を、ITを駆使した装置で解き明かしてくれる。
絵が映し出されたモニターの隣に六角形のブロックを積んでいくと、カンバスを下塗りし、色やニスを重ね合わせるプロセスが映し出される。別の装置では画家が構図を決定する過程を追体験し、ルーヴル美術館のスペイン絵画コレクションの成り立ちを学ぶこともできる。装置はすべて日英仏の3カ国語に対応。背景や衣装、小道具を変えて、画像をプリントできるスロットマシンのような装置まである。遊び心たっぷりの趣向だが、これらはすべてルーヴル美術館の学芸員らが企画段階から加わり、大日本印刷と共同で開発した。
同展の学術担当でルーヴル美術館のギヨーム・キンツ学芸員は「テクノロジーを使って絵画とは、美術館とは、コレクションとは何かを理解してもらうために、厳しく(内容を監修して)作った」と説明する。制作プロセスの映像も、現代の画家に当時の技法を再現させて撮影し、スロットマシンのような装置の1万4千種の画像も学芸員らが目を通したという。
専用アプリで解説
東京・上野の東京国立博物館は、専用アプリ「トーハクなび」をダウンロードしたスマートフォン(高機能携帯電話)のアンドロイド端末を館内に持ち込み、総合文化展(平常展)を鑑賞するプロジェクトを開始した。
「日本美術入門コース」「法隆寺宝物館鑑賞コース」「建物めぐりコース」など30〜45分で回れる5つから好みのものを選ぶ。中でも「スペシャルコンテンツコース」は体験型の内容が人気。展示室内で実際の展示物を見ながら、画面をタッチして蒔絵(まきえ)の制作を体験したり、端末を振って密教の法具である金剛鈴の音を出したりできる。様々な素材の文化財を収蔵する同博物館では館内222カ所で温湿度を計測していることも解説。鑑賞者の関心に応じ、膨大な情報を簡単な操作で自由に取り出せるのは情報機器のメリットといえるだろう。
東京大学の広瀬通孝教授は「美術館や博物館は“モノ”を収蔵している。これにまつわる背景や文脈である“コト”の伝達がITの得意とするところ」と話す。
広瀬教授は絵画などを高精細でリアルに「再現」するよりも、実際に触れることができない古代の楽器を仮想現実空間で鳴らしてみるような「体験」を重視する。凸版印刷と共同で開発した「デジタル展示ケース」は、江戸期の動く工芸「自在置物」を画面上で動かしながら鑑賞するもの。今年1月に期間限定で東京国立博物館内に設置した。
ルーヴル美術館館長の働き掛けで2006年に始まったルーヴル―DNPミュージアムラボは、過去の展示で使用したIT鑑賞装置を同美術館に設置している。「ゴヤの《青い服の子供》」展の装置の一部も、スペイン絵画の展示室内に置かれる予定。作品鑑賞の体験を豊かに膨らませるITは世界的にも注目されそうだ。
(文化部 窪田直子)