2012年の日本株、「予想増益率世界首位」支えに上昇か :日本経済新聞
2012年、世界の株式市場はどう動くのか。日本株は東日本大震災後の復興需要を支えに緩やかな上昇を見込むが、米国では不透明さを警戒する声がある。先行きを読みにくくしているのは欧州債務危機に揺さぶられた前年、身に染みた「政治」のリスクだ。12年は米国で大統領選、中国でも政権交代を控える「選挙の年」だけに、例年以上に留意する必要がありそうだ。
2012年の日本株相場は緩やかに上昇する展開になりそうだ。東日本大震災後の復興需要が下支えし、日本企業の2013年3月期の経常利益は20%前後の増益になるとの見方が多い。欧米や新興国の増益率を上回る見通しで、好業績が外国人投資家の買いにつながりそうだ。主要証券会社の日経平均株価の予想レンジは「8000〜1万1000円」。ただ欧州債務危機が深刻さを増す場面では、景気敏感株が多い日本株が売られる場面も想定される。
米ゴールドマン・サックスによると、世界の主要企業の12年の1株あたり利益は平均で10.6%増の見通し。主要市場でみると日本が23.8%増で、中国(本土)の23.4%増を上回り、トップとなる見通し。先進国では米国が10.5%増、ドイツが8.6%増にとどまる。高成長が続く新興国もインドネシアが19.3%増、インドが13.3%増で、日本に届かない。
12年度に日本で高い増益率が見込まれるのは、11年度に震災の影響で業績が落ち込んだ反動増によるもの。円相場が急騰すれば12年度の増益率が20%に届かない可能性もあるが、それでも現時点で大きな下振れを予測する投資家は少ない。米景気は緩やかながら回復に向かい、輸出主導で日本企業の業績をけん引しそう。BNPパリバ証券の丸山俊日本株チーフストラテジストは「米経済が堅調ならば年央までに日経平均が1万円を上回る可能性がある」と話す。
12年最大のリスク要因は引き続き欧州問題だ。なかでも1〜3月期はイタリアやスペインなど重債務国の国債の大量償還・入札が集中しており、金融市場で緊張が高まる可能性が高い。欧州連合(EU)や欧州中央銀行(ECB)の政策対応次第では、世界の金融市場の値動きが荒くなる展開も予想される。日本株には自動車など業績が世界景気に左右されやすい銘柄が多い。外国人持ち株比率が高い主力株は、欧州問題をきっかけに投資家が「リスクオフ(回避)」に傾くと、売り圧力が強まるだろう。日経平均が一時的に8000円を割り込むリスクも頭に入れておく必要がありそうだ。
政治にも注目したい。12年は「選挙イヤー」で、米国、ロシア、フランスなどで大統領選挙が予定されている。中国では5年に一度の共産党大会で政権交代がある見通しだ。日本でも9月に民主党代表選が予定されている。クレディ・スイス証券の市川真一チーフ・マーケット・ストラテジストは「日本もねじれ国会による膠着状態を打破するため、解散・総選挙の可能性が高い」とみる。
選挙に備え、世界的に積極的な財政・金融政策が広がれば、プラス材料になる。ただ国民の支持を得るために自国の利益を優先し、排他的な政策を打ち出せば、かえって市場の混乱を招きかねない。
株式市場では「米大統領選の前年の株価は高い」という経験則がある。11年の米ダウ工業株30種平均は約6%高と前年末を上回った。それでは選挙がある年はどうか。大和証券キャピタル・マーケッツの木野内栄治チーフテクニカルアナリストによると、1932年以降、米国で大統領選のある年にダウが上昇したのは20回中13回。今回のように現職が再選を目指す場合は14回中10回上昇している。米国株が上昇すれば、日本株を下支えする効果が見込めるだろう。
12年は辰(たつ)年。辰(たつ)年の平均上昇率は29%と十二支中首位。過去60年の勝敗は5戦3勝で、経験則では上がりやすい傾向がみてとれる。相場格言でいう「辰巳天井」の再来なるか。
(2011.1.1/土居倫之)