2012.1.1日経コピペです。
既に実験は開始していますが、モデル校でも未だ生徒6人に1台、教師は全員1台、といった具合です。予算の関連もあり、なかなかスムーズな拡大が難しいと聞きます。確か、ソフトバンクの孫正義社長が「教科書のPC化」を提唱したのは2010年春です。政府でも2010年6月にはその方針に沿った決定をしています。その間に、PCは相当のスピードで価格下落し、iPadや同用途のタブレット端末も昨秋辺りから売り出されています。昨年夏頃には、インドで同様の者を3200円程で開発し、2700円程で学生生徒への普及を国策として推進するとの報道がありました。日本ではその価格はソフト面やハード面でも無理があり、もう少し高くなるでしょうが、本気となれば出来てしまうはずです。あまりに安くなって、日本メーカー総撤収の中型までのTV(春の売り出しでは32型29800円まで出て来ました)の事例もあり、PC関連も相当下落しています。予算をしっかり見直せば、教科書代や辞書参考書の購入予算があり、実現スピードアップは意志力次第と思われます。使い方のソフト開発、教師の知識レベルアップが一番時間がかかるものとなるでしょう。
学校の教育現場にIT(情報技術)を導入する動きが始まっている。個別の対応がしやすくなり、IT機器を使いこなす力も身に付くとの期待がある。一方、多額の財源や、視力低下など健康への影響を心配する声もある。2012年は国が選んだモデル校で授業が本格化する。学びの改革には多くの課題克服が必要になる。
国は20年までに全児童生徒に米アップルのiPad(アイパッド)のような携帯型の情報端末を1台ずつ配る目標を掲げている。政府のIT戦略本部が10年6月に決めた。
実現を担うのは総務省と文部科学省だ。総務省が情報端末や通信環境の整備、文科省が教材開発や教員の支援を受け持つ。
両省はモデル校となる小中学校と特別支援学校を20校選定。一部で情報端末を使った授業を始めた。12年はモデル校で使うデジタル教材が出そろい、教育効果の実証研究が本格的に行われる。
高等教育にもIT化の波が押し寄せる。その一つが大学の講義をインターネットで無償公開する「オープンコースウエア(OCW)」。米国が発祥で、日本では東京、京都、早稲田、慶応など有力大24校が始めた。時間や場所に制限されず、誰もが高等教育に触れられる環境が整いつつある。
「この『へん』に合う『つくり』を考えて漢字を完成させよう」。教師が呼び掛けると、児童が1台ずつ配られた携帯型情報端末の画面にタッチペンで書き込み始めた。
東京都葛飾区立本田小学校で昨年11月にあった3年生の国語の授業で、「さんずい」や「いとへん」の漢字を探す学習が行われた。児童が書いた字は電子黒板に映し出され、教師が解説を加えていく。教師は「一瞬で全員の状況が分かり、個別指導に時間をかけられる」と手応えを語る。
同校は教育のIT化のモデル校。全学年314人に端末を1台ずつ、各教室に無線LANと電子黒板を備え、様々な教科でITを使った授業の実証研究が進む。筒井厚博校長は「学習意欲と表現力の向上、子供の学び合いの活性化に役立っている」と話す。
今年は近未来を思わせるこうした授業風景が各地で広がっていく。
背景には新学習指導要領の本格実施がある。授業時間が限られる中、文科省はITの活用で知識の定着と応用力の育成を効率的に進められると期待。子供が学び合う「協働学習」にも有効という。
IT機器の操作に習熟する必要性も増す。経済協力開発機構(OECD)の調査で、インターネット情報を読解する力は、日本は参加19カ国・地域中4位。国を挙げて情報教育に取り組む韓国は1位だ。身近なIT先進国の存在はいい刺激になる。
機器の使い勝手の向上やコスト削減も進む。教材会社などは「デジタル教科書教材協議会」を発足。学校での実証実験を始めている。教育のIT化は大きな商機で、産業界が向ける視線は熱い。
パソコンを通じて誰もが各国の大学の講義を受けられる――。こんな風景も珍しくなくなる。OCWの普及が加速するためだ。01年に米マサチューセッツ工科大が計画を発表し、日本の大学も既に約2千の講義を公開。講義資料や講義録のほか、授業風景を映像でそのまま流すなどしている。
日本のOCW推進団体が10〜60代の1200人を対象にした調査では79%が「利用したい」と答えた。キャリアアップのため高度な知識を取得したいと考える層は多い。大学にも教員の意欲向上や学生獲得につながる利点がある。
教育関係者や産業界の期待が高い学校教育のIT化。しかし実現には課題が山積している。普及は進まず、紙の教科書を使った従来の授業が続く可能性もある。
最大のネックは財源だ。モデル校で使っている携帯型の情報端末の市場価格は最低でも10万円程度。全国の小中高校生ら1400万人に1台ずつ配ると約1兆4千億円かかる計算だ。
各教室に電子黒板や無線LANを整備することも欠かせない。国も地方も厳しい財政状況が続く中、多額の支出が求められるインフラ整備は一気には進まない。
指導する教師はどうか。文科省が11年、全国の教員にITを授業で使えるか聞いたところ、「できる」は62.3%。現行の調査を始めた07年からは9.7ポイント増だ。機器が行き渡っていない影響もあるが、心もとない。
IT化そのものへの抵抗感も壁になる。文科省がIT化推進のため設けた有識者懇談会では「情報化だけを先鋭的に進めることなく、手で書くなどの身体活動を組み合わせるべきだ」との意見が出た。同省は「紙の教科書やノートはなくさない」と説明するが、子供の頃から情報機器に囲まれる生活が続くことを危惧する声は根強い。
健康への影響も十分に分かっているとは言い難い。ディスプレーを長時間見ることで視力が低下したり、肩こりが生じたりする懸念がある。国のモデル校では教室内の明るさをこまめに測ったり、授業中に軽い体操を行うなど気を使っている。同省はIT機器を使用する際の指針を示す方針だが、保護者の不安を解消できるかは未知数だ。
大学の講義を無償公開するOCWも思うほど広がらない可能性がある。講義資料などを分かりやすく整えたり、講義録を作るため教員が話したことを文字に起こしたりする手間がかかる。実際の講義を動画で撮影すればこうした手間は省けるが、ネットで公開することに抵抗感を覚える教員は少なくないという。
OCWの講義で分からない部分があっても教員に直接質問できず、大学から単位や学位が認定されないことも課題だ。米国ではネット上で閲覧者が質問・回答し合ったり、講座の修了認定を受けられる仕組みづくりが始まったが、日本はこれから。大学だけでなく周辺の支援充実が必要になる。