朝日新聞デジタル:我こそ、未来のジョブズ 米のIT起業、きっかけは
タンブラーのデイビッド・カープ最高経営責任者(CEO)=畑中徹撮影
米国では、新しいIT企業が次々と誕生している。事業が成功するのはほんの一握りの企業だが、経営者たちは、どんなきっかけで事業を始め、将来は何をめざすのか。「未来のスティーブ・ジョブズ」たちの素顔に迫った。
■タンブラー 失恋と東京移住
米IT業界で注目株なのがタンブラーだ。写真や動画、音声も入ったブログを簡単に作成できるサービスを提供し、開設されたブログ数は世界で6千万件を突破。「もっとも速いスピードで成長したIT企業の一つ」とされ、オバマ米大統領も選挙戦で活用している。
最高経営責任者(CEO)のデイビッド・カープ氏は26歳。ひょろりとした容姿で、いつも白いスニーカーにパーカ姿。生まれも育ちもニューヨーク・マンハッタンだ。
「惰性に流される生活はいやだ」と、高校を中退。人生の転機はそのころの失恋だった。「ニューヨークから一番遠い場所に行きたい。マンハッタンと同じぐらい刺激があるのは東京じゃないか」と、ニューヨークで日本語を学び、17歳で単身日本に移り住んだ。東京では、ソフトウエアの分野で優秀な技術者に多く会えるとも考えた。
滞在は5カ月だったが、大手電機メーカーの本社が集まる東京・浜松町に住み、知り合った多くの技術者らから知見を得た。
2007年、21歳でタンブラーを設立。創業から5年だが、企業価値は10億ドル(約780億円)に迫る。英国のヴァージン・グループの著名なリチャード・ブランソン会長から投資を受けたことも追い風となった。急成長に脅威を感じたフェイスブックが「買収に乗り出す」という観測まで流れる。昨年は12人しかいなかった社員が、いまは100人を超える。
「(米アップル創業者の)スティーブ・ジョブズや(米アマゾンの創業者)ジェフ・ベゾスのような経営者になりたい」と話す。
タンブラーという変革を起こすIT時代の寵児──デビッド・カープ(タンブラーCEO)【現代パイオニア歴伝】 « GQ JAPAN
タンブラーを創立したデビッド・カープは、ニューヨーク生まれの25歳。年齢を隠して、都市部に住む母親が情報交換するためのサイト「アーバン・ベイビー・ドットコム」でソフトウェアコンサルタントを務めたという“神童”だった。
文・佐久間裕美子
貧富の格差に対する草の根の抗議運動としてNYから世界各地に飛び火した「オキュパイ・ウォール・ストリート(OWS)」が実は一部で「タンブラー革命」と呼ばれているのをご存じだろうか?OWSの主催者たちはデモを始める前の8月に「wearethe99%」というアカウントを設置し、ローンが払えない、仕事が見つからないといった自分の苦境を表す文章に「私は99%です」の文に加え、写真とともにアップするように、一般ユーザーに呼びかけていた。このアカウントは、気に入ったポストを自分のフォロワーと共有するタンブラーの「リブログ」機能によって瞬く間に拡散し、ネット上でOWSが知名度を上げるのに大いに貢献した。
11月初旬現在で2500人以上のステートメントが掲載されている。イランの反政府運動がツイッターを利用して海外に情報を発信し、エジプトで学生たちがフェイスブックでデモの参加者を動員したように、タンブラーは「99%」の一般市民が顔を見せて声を上げる場を提供した。タンブラー特有の写真や動画を投稿できるミックスメディアの側面が役に立ったわけだ。
タンブラーを創立したデビッド・カープは、ニューヨーク生まれの25歳。14歳でアニメのプロデューサーのもとでインターンを始め、その後、年齢を隠して、都市部に住む母親が情報交換するためのサイト「アーバン・ベイビー・ドットコム」でソフトウェアコンサルタントを務めたという“神童”だった。
ショートフォームのブログ「タンブログ」という言葉が登場したときに、どこかのIT企業がプラットフォームを作るのを待っていたが、その動きがなかったために自分で作ってしまったことを複数のインタヴューで明かしている。
デビッドが目をつけたのは、登録される膨大なブログ数と、実際に維持される「アクティブな」ブログの数のギャップ。そこで考えたのが、ワードプレスやブロガーといった、ブログサービスに比べて圧倒的にナビゲートしやすいデザインだった。
サイトをローンチしてからは、クリエイティブ系のブロガーたちにアプローチして一気に数万人レベルのユーザーを得た。ここから「リブログ」機能を使いたい読者たちが次々とサインアップしたことで、瞬く間に業界有数のプレイヤーに躍り出たわけだ。
無数にある有料無料のテンプレートを使えるシステムのおかげでデザインの自由度が高いこと(自分でテンプレートをデザインすることもできる)、音源から映像まであらゆるメディアをクリップすることができる機能などのおかげで、セレブ(レディー・ガガやジョン・レジェンド)やクリエイター(テリー・リチャードソン)、またビジネス(スタンダード・ホテルなど)が次々参入している。「ブログが日記だとしたら、タンブラーはスクラップブック」というキャッチフレーズに、分かりやすく手軽なフォーマットで自己表現の幅を拡大したデビッドの考えが端的に表れている。
佐久間裕美子
慶応義塾大学を卒業後、渡米し、エール大学で修士号を取得。ロイター通信などを経て、2003年からフリー。テーマは社会、文化、旅、人。http://www.yumikosakuma.com …色々な写真を垣間見られますよ!
(参照:tumblr)
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